寿限無

教育出版の小学4年生の国語の教科書に、世界の笑い話という単元があり、トルコや中国、
韓国の笑い話が載っている。日本の笑い話には落語の「ぞろぞろ」が選ばれており、巻末
には三遊亭円窓の「寿限無」が教科書のために書き下ろされている。


たしか、何年か前の教育テレビでも、「寿限無」の長い名前を憶えさせる子供向けの番組
があった。なので、最近の子は落語をほとんど知らなくても「寿限無」だけは知っている。


落語全体からすると、「寿限無」はそう面白い噺ではなく、落語家が入門したときにおぼ
える練習用のネタという位置づけだろう。
しかも、小学生の教科書に載っているバージョンは下げが違っている。


本来は寿限無が井戸で溺れてしまう噺だったと思うが、教科書では、親が寝ている寿限無
を起こしているうちに時間が経って夏休みになってしまった、という下げになっている。
まあ、子供が死ぬ噺を教科書に載せるわけにもいかないから、こういう下げでもいいんじゃ
なかろうか。


で、たまたまサライという雑誌に落語の特集があり、付録のCDに三遊亭円窓の「寿限無」が
収録されているので買ってみた。
しかも、内容を書き起こしているブックレットも付いていたので、コピーして子供に渡し、
一緒に聴いた。


私は三遊亭円窓という落語家を、これで初めて知ったのだが、なかなかきちんとした語り
口でよかった。
初めて落語を聴いた子供も、ちょっと興味を持ったみたいだった。


ここから古典落語の世界に入っていく子供たちは、ほとんどいないだろうけど、「寿限無
だけは小学生のとき聴いてぼんやりと憶えている、という子はたくさんいるはずだ。


私は、日本人なら落語のネタのひとつも知っていなければ、と考えているので、教科書に
落語を入れたのは英断だと思う。


寿限無」のほかに「あたま山」を載せていた教科書もあるそうで、古典落語を知ってい
る子供たちがどんどん増えるのはうれしいことだ。
さすがに小学生たちに廓噺を教えるわけにはいかないけれど、「粗忽長屋」なんかはシュ
ールでいいんじゃなかろうか。