
- アーティスト: 古今亭志ん朝
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1995/08/21
- メディア: CD
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私は古今亭志ん朝のテープしか持っていないが、大晦日にしみじみと「芝浜」を味わって年の瀬の
気分を盛り上げている。
Wikipediaの「芝浜」の項には、主人公の魚屋は勝という名前になっているが、志ん朝のものでは
熊になっている。私は熊さんの方が好きだ。深く問わないでほしいが。
もともと目利きだった魚屋が、酒に溺れて商売をしくじり、どんどん駄目になっていくところから、
芝の海岸で50両(いまだと500万円ぐらい?)も入った財布を見つけて大急ぎで長屋に戻ってくる
あたりまで、一気に聴かせる。
ここから女房の機転で財布はなかったことになって、熊さんは真人間に戻る。
このとき、熊は「人間、ちゃんと働かないとダメだ」と言う。
働かないで楽をしたいと誰でも思うけれど、働いて稼ぐ方がよほど楽なんだ、と。
もともと腕のある魚屋だったから言えることではあるが、そうでなくても働いて金を稼いで、それ
から好きなことに使うのが一番だと、私も思う。
誰に文句を言われることもないし、自分と世間が折り合っている、という実感がある。
ニートの皆さんに、ぜひ聴いていただきたい落語のひとつである。
志ん朝の演出する女房像は、しっかりした情の厚いおかみさんだ。
やり方によっては、鼻持ちならない嫌な女になる可能性もあるが、熊さんがきれいに女房を持ち上
げることで回避している。
口跡の美しい志ん朝ならではの手際のよさと言える。
それにしても、もしこの夫婦に子供がいたらどうしていただろう。
江戸時代の長屋で暮らしている夫婦に、どのくらい子供がいたのか分からないけれど、こうした子
供のいない夫婦というのは、あたりまえのようにいたのだろうか。
なんとなく、上方落語との違いはこのあたりにあるような気がしてならない。
それではみなさま、よいお年を。