崇徳院

特選!!米朝落語全集 第三十集 [DVD]

特選!!米朝落語全集 第三十集 [DVD]

久しぶりに米朝師匠の落語を引っ張り出して聴いてみた。
崇徳院NHKの朝ドラ「ちりとてちん」でも採りあげられていた噺で、主人公の熊五郎の軽妙な
話しぶりとおっちょこちょいなところが面白い。


どういう話かは検索してもらうとして、この落語に登場する若旦那が惚れる美しい娘の行動は、
よく考えると不思議である。
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」という百人一首の歌の
上の句だけを書いて若旦那に渡して姿を消す、というのがそれだ。


この歌は崇徳天皇が詠んだもので、意味は「流れが速いので、岩に遮られて二手に分かれている
川の流れがまた一つに合流するように、今別れ別れになっているあなたともまたいつか逢いたい
と思っています」と Wikipedia にあった。


いわば、女の方から誘いをかけておきながら、何もせずに帰るという、よくわからない行動をし
ているのである。
話の最後の方で、娘の方も恋わずらいで臥せっている、と語られるが、和歌の上の句だけを書い
て渡す、ということをしておきながら、その後がノープランなのは納得いかない。


まあ、キャラクターの造形としては、恋愛の駆け引きにウブな娘の方が演出しやすいのだろうけ
ど、それにしては「瀬をはやみ」をとっさに書いて渡すなど、なかなかの腕前である。


本当は自分の名前や住所を書いて渡せば、探す苦労もないわけだが、そうなると落語そのものが
成立しなくなるし、ロマンティックな雰囲気も台無しだろう。


当然、落語家はこの美しい娘を直接演じることはしない。あくまでも伝聞で描写するだけである。
こうしてミステリアスな印象を持たせ、物語を最後まで引っ張るという演出だろう。
よくできた構成だと思う。


もっとも、恋わずらいで寝込むような娘も、いざ所帯を持てば、熊五郎の嫁のように旦那をこき
使うようになるのだ。
実際、この嫁を演じるときの米朝は生き生きしているように聴こえた。
味わい深い一席でした。


本文と写真はまったく関係ありません

川*^∇^)||<瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
从´∇`从<われても末に あはむとぞ思ふ