無人島に生きる十六人

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

帰省した友だちが面白いからといって貸してくれた。
うむ、確かに面白かった。


これは明治32年(1900年)にミッドウェー島付近で遭難し、無人島で約半年間生き延びた男たちの
実話をベースにした話である。
もともとは昭和16年(1941年)10月から少年クラブで連載されたもので、なぜか平成になって文庫
で復刻した。


時代背景が時代背景だけに、内容は実に健全で、日本人の規範となるようなことが書かれてある。
なにしろ、実際に遭難したのが日露戦争前のことで、それを少年向けの読み物にしたのが太平洋
戦争直前である。
あくまでも日本男児が知恵と勇気で生還する話でなければならなかったのだろう。
(実際に全員が生き延びて日本に戻ってきたのはすごいことだが)


かといって、お説教のような堅苦しい読み物ではなく、実にユーモラスに無人島生活が語られてい
る。これは書き手の資質によるものと、カミガキヒロフミの見事なイラストによるものだと思う。
私はこの本で初めてこのイラストレーターを知った。


読んでいて、大丈夫かと思ったのは、やたらと海亀を捕まえて食べているところだ。
当たり前だが、明治時代に環境保護とか絶滅危惧種なんて概念はないから、その頃は普通のこと
だったんだろうけど、実に無邪気に海亀について記されている。


私は海亀を食べたことがないが、この本によると

 正覚坊の卵は、うまい。鶏卵より小さくて、丸く、灰白色の殻はやわらかで、中にはきみとしろ
みがある。そして、いくらゆでても、しろみがかたまらない。


 タイマイの卵も、うまい。しかし、その肉にはにおいがあって、食用にならない。そしてこのか
めは正覚坊よりは元気があって、よくかみついた。


 正覚坊のことを、一名アオウミガメというのは、暗緑色で、暗黄色の斑点があるからで、大きさ
も、形もよくにた海がめにアカウミガメというのがある。これは、からだが、うすい代赭色で、甲
は褐色であるからだ。アカウミガメの肉は、においがあって、食用にならない。肉ににおいのある
かめは肉食をして、魚をたべているかめで、正覚坊は海藻をたべているから、においがないのだ。

とある。


正覚坊(しょうがくぼう)というのはアオウミガメのことだそうで、現在は絶滅の危機にある。
明治時代には、いくら捕まえても減る心配はなかったのだろうか、ほぼ主食みたいな感じで食べて
いる。そんなに旨かったのか。


もうひとつ気になったのは、小笠原諸島帰化人である。
祖父の世代に捕鯨船で太平洋を航海した人が島に住み着いて、そのまま日本に帰化したらしい。
英語も日本語も堪能で、頼りになる海の男だったようだ。
彼らの子孫は、いまでも小笠原諸島にいるのだろうか。


他にもアザラシが人に懐く話や、海綿を使った塩の作り方など、様々なエピソードが読みやすくつ
ながっており、いま読んでも十分おもしろい。
夏休みの読書感想文にもってこいではなかろうか。


本文と写真はまったく関係ありません

从o゚ー゚从<ハロプロで一番サバイバル能力があるとゆいたい