とめはねっ!

とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

高校の書道部の話である。
カナダからの帰国子女でダサい男の子が主人公で、ヒロインは柔道で全日本二位になったことも
ある美少女。この二人が、なぜか書道部に入部し、書の奥深さを知っていくうちに仲良くなる
(たぶん)物語だ。
書道のマンガって、そういえばなかったような気がする。


これまでの河合克敏のマンガでは、主人公に必ず恋人がおり、多くの少年マンガにあるような、
「恋人になるまでの過程」ではなく、「恋人になってからのあれこれ」を描いた点で画期的だっ
たと思う。


また、主人公に恋愛関係の視点を持ち込まないことで、本人が打ち込むべきもの(柔道とか競艇
に読者の興味を集中させていた。このあたりは非常にうまい。
その一方で、サブキャラクターたちの恋愛模様についてはしっかりと描いており、決して恋愛要
素を排除したパサついた作品にはなっておらず、バランスがよかった。


ところが、「とめはねっ!」では、主人公とヒロインが相思相愛になっていない。
それどころか、ヒロインは主人公を男扱いすらしてない。
さらに悪いことに、主人公が入った書道部の先輩3人は女で、そのうち2人は底意地が悪い。
萎縮する主人公がアピールできるとしたら、書道が上手くなることだけである。


自分の気持ちをヒロインに書道で伝えることが、このマンガの着地点ではないかと思うが、どう
だろうか? そんなベタな話ではないかな。
ともあれ、今後がとても楽しみな作品である。


不思議なのは、どうしてこのマンガがヤングサンデーで連載されているか、ということだ。
本来なら少年サンデーに掲載されるべきものだと思うが、いまの少年サンデーの読者は中学
生がメインなので、高校生が主人公の作品は人気がないのかもしれない。


私が若いころの少年マンガ誌は、もう少し読者の年齢が高く、高校生が主人公のマンガがたくさ
んあった。
少年サンデーの黄金期だった80年代には、「炎の転校生」とか「うる星やつら」とか「タッチ」
なんかが連載されていたが、これらのマンガはすべて主人公が高校生である。


ところが、かつて少年誌でカバーしていた読者層が細分化し、ヤングマガジンヤングサンデー
に流出していった。
自分たちが作った市場に読者を奪われていったのである。


もうひとつはセックスのカジュアル化だ。
少年誌に掲載していたマンガでは、たとえ高校生が主人公だろうとセックスは基本的にタブーだ
った。時代的にもそれが当たり前だったのである。

キラキラ! 1 (KCフェニックス)

キラキラ! 1 (KCフェニックス)

安達哲の「キラキラ」のような例外はあったが)


現在では、高校生ともなれば4割ぐらいは経験済みだろうから、少年誌の世界とはズレが生じる。
なので、ヤング誌ではセックス描写をアリにして、読者を引きとめようとしているのだろう。
もちろんグラビアの女の子もそのためだ。


そうすると、少年誌では読者の年齢を引き下げて、セックス描写を許さない世界観を守るしかな
い。具体的な行為を描かずとも、パンチラなどで萌えさせることは可能だ。
これが、ますます少年誌の内容を痩せさせているのではないかと思う。


河合克敏のようなマンガ家が少年誌に復帰して、健全な(というと語弊があるが)セックス描写の
ない作品を描いてもらわないと、部数の低迷に歯止めはかからないのではなかろうか。
エロ描写は放っておいても同人誌でいくらでも描かれるわけだし、メジャーな雑誌の作品はそれ
なりの品格があってもいいと思うのです。


本文と写真はまったく関係ありません

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