つっこみ力

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

初版の帯には吉田戦車のイラストが描いてある。
反社会学講座」のカバーも吉田戦車だったが、彼がイラストを描いた本は売り上げがいいのだろうか? 
そういや、しりあがり寿のイラストが描いてあった新書もベストセラーになったっけ。


それはともかく、この本は相変わらずの統計漫談で面白かった。
その面白さのうしろには、エコノミストに対する怒りが隠されているけれど。
(なんか、ある経済学者と著者がウェブ上で年金について論争したそうです)


私もかねがね思っていたのだが、なんで経済学に詳しい人は、あんなに偉そうなんだろう。
たぶん、自分が偉いと思っているからなんだろうけど。
あんたが頭いいのは分かった。けどそれが何か? ってなもんだ。


この本には

「経済学なしに社会は成り立たないのだ」、みたいな、思い上がった発言をしているような人たちは、
私の意見に激怒するでしょうけど、そんなもん、女子高生が「あたし、ケータイないと死んじゃうー」
ってのと同レベルのゴタクにすぎません。あれば便利だけど、じつはなくても平気ですし、入れ込む
と逆に害を及ぼすこともあるというのが、社会科学です。

とある。


ね?
エコノミストは、自分以外の誰を幸せにしてるんだろうって思うですよ。
もちろん、エコノミストたちは自分が幸せにしている(と思い込んでいる)人々をいくらでも挙げら
れるだろうけどさ。
いま読売新聞に回顧録を書いている加藤寛という経済学者なんて、日本を滅茶苦茶にしたオッサンなん
じゃないか、と読んでて思ったね。


で、なんで私やパオロ・マッツァリーノエコノミストを嫌うかというと、そこに分かりやすさも愛も
勇気もないからなのだ。
文系なのに数学必須だし、バカを心からバカにしているし、自分だけ安全な場所にいて批判しているし。
(ま、ほとんどの社会科学者はそうなんだろうけど)


その点、この「つっこみ力」は読んでいて私にも理解できる、ということはほとんどの人にも理解できる
ということだ。
特に、最後の方に書いてあった、住宅金融公庫の話は、なんで社会問題にならなかったんだろう、と思う。

 ゆとりローンでは、最初の5年は返済額がとても低く抑えられていたので、貧乏人でも家賃並みの返
済額で夢のマイホームが持てる、と評判のいいシステムでした。しかし平成12年に廃止されます。夢
のように思えたシステムが、じつは悪夢だったことが、わかったからです。


 最初がラクなぶん、6年目から返済額は2倍近くまで跳ね上がるのです。具体例を調べてみたら、当
初は月々6万円、ボーナス月37万円の返済だったのが、6年目から月10万円、ボーナス月64万円の支
払いになったケースがありました。年間の返済額が、いきなり約100万円もアップするんです。
(中略)
ゆとりローンが始まったころから、あれはヤバい、詐欺まがいだぞと危惧する声は上がっていたので
す。


 詐欺呼ばわりされた張本人の住宅金融公庫にいわせれば、ゆとりローンは、平成2年の日米構造協
議の産物として押しつけられたものだったそうです。日本政府はこの協議で、日本の住宅は狭すぎる
から、もっと広い家をジャンジャン新築して内需拡大を図りなさい、というアメリカさんからの命令を
飲み込みました。政府や官僚のみなさんは、その目標をクリアするために、狭い借家暮らしの貧乏
人に住宅ローンをばんばん組ませて、住宅建設を促進すればいいじゃん、って軽く考えていたのです。


この後、住宅ローンと自殺者の関連性が語られるのだが、それは買って読んでいただくとして、たしか
前著の「反社会学の不埒な研究報告」でも、賃貸住宅について書いており、欧米的な住宅の考え方の方
がいいのではないか、と結論付けている。


ここ何年かで、高層マンションがどんどん建てられており、多くの人が住宅ローンを組んでいると思う。
建てて売った業者は、後は野となれで知らん顔ができるけれど、実際に買ってローンを組んだ人々は、
これから金利が上昇したときに対処できるんだろうか、と思う。


高層マンションの規制緩和って、やっぱり米国に言われたからやったんだろうか? 


本文と写真はまったく関係ありません

从*・ 。.・)<限られた予算でおいしいものを作るためのインセンティヴって何なの?