- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/05/18
- メディア: 文庫
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私は2冊目、3冊目と読んでからこれを読んだ。
主にスポーツ観戦記がメインで、文庫版には2011年に北朝鮮で開催された
サッカーのワールドカップ予選の試合を見るために訪問した旅行記が収録
されており、これも切れ味鋭く面白かった。
そして何よりも「渡辺篤史の建もの探訪」に注がれる愛である。
あまりの熱意に、私は生まれて初めて録画をして見てみた。
ちょうど文京区の医師の家の回で、なるほどエッセイに書いてあるとおりに
渡辺篤史が喋るなぁ、と感心した。
番組を見て、私は建築に対する興味が完全に欠落している、ということも
よく分かった。
こういう家に住みたい、という具体的な欲望が全く湧かないのだ。
もしかしたら、それこそが階層の違いを最もよく表すものなのかも
しれない。
建築やインテリアに一家言あるかないかで、その人の育ちが分かる
のではなかろうか。
自分の思い通りの家を建てるというのは、夢のような話ではあるが、
実現している人もいる。
ハウスメーカーが販売する一戸建てではなく、自分の思想を反映させた
住宅を建築できる人は、ごく限られるけれど、社会的な成功者の証で
あろう。
むしろ、そういう欲望を具体的に思い描ける人だけが、社会で成功
できるのではなかろうか。
毎週毎週そういう人々を見ることができるのは、自分も成功者だと
思わなければ耐えられないと思う。
それとも、純粋に建築やインテリアが好きな貧乏人も楽しめている
のかしら。