ザ・万遊記

ザ・万遊記 (集英社文庫)

ザ・万遊記 (集英社文庫)

万城目学の最初のエッセイ集である。
私は2冊目、3冊目と読んでからこれを読んだ。


主にスポーツ観戦記がメインで、文庫版には2011年に北朝鮮で開催された
サッカーのワールドカップ予選の試合を見るために訪問した旅行記が収録
されており、これも切れ味鋭く面白かった。


そして何よりも「渡辺篤史の建もの探訪」に注がれる愛である。
あまりの熱意に、私は生まれて初めて録画をして見てみた。
ちょうど文京区の医師の家の回で、なるほどエッセイに書いてあるとおりに
渡辺篤史が喋るなぁ、と感心した。


番組を見て、私は建築に対する興味が完全に欠落している、ということも
よく分かった。
こういう家に住みたい、という具体的な欲望が全く湧かないのだ。


もしかしたら、それこそが階層の違いを最もよく表すものなのかも
しれない。
建築やインテリアに一家言あるかないかで、その人の育ちが分かる
のではなかろうか。


自分の思い通りの家を建てるというのは、夢のような話ではあるが、
実現している人もいる。


ハウスメーカーが販売する一戸建てではなく、自分の思想を反映させた
住宅を建築できる人は、ごく限られるけれど、社会的な成功者の証で
あろう。
むしろ、そういう欲望を具体的に思い描ける人だけが、社会で成功
できるのではなかろうか。


毎週毎週そういう人々を見ることができるのは、自分も成功者だと
思わなければ耐えられないと思う。
それとも、純粋に建築やインテリアが好きな貧乏人も楽しめている
のかしら。