パラサイト・シングルという言葉がちょっと流行ったことがあった。
親と一緒に暮らしている若者は、家賃や食費などの生活費を親に一部または全面的に依存して
いるから、いつまでも自立できないのだ、という話だった。
裕福な家庭に生まれたなら、わざわざ外に部屋を借りなくてもいいとは思うが、それでも一度は
一人暮らしをした方がいい。
不動産屋をめぐり、家賃や部屋の広さ、場所などの折り合いをつけて契約する行為をやっておく
ことで、日本の住環境がいかにひどいものかが分かるだろうし、衣食住の全てを自分でやらな
ければならないことで、親のありがたさも分かるだろう。
そうやって、孤独のありがたさや寂しさを自分で飼いならせるようになると、だんだんと自分な
りのライフスタイルができてくる。
食事とか風呂などの、他人にはどうでもいいことだけど、自分にとっては快適なやり方が見えて
きて、それを邪魔されると何となくイラッとする。
これが長年続くと、もう他人の入り込む余地がなくなっていく。
もしかしたら、家族と暮らしていても、自分の部屋があって誰にも干渉されない人はそうなる
かもしれない。最悪のパターンが引きこもりだろうけど。
そういう一人暮らしの長い人が結婚すると、どうしても同居する人と対立することになるだろう。
あるいは、あらかじめ一人の時間や場所を確保しないと結婚を継続できない、とお互いに妥協する
場合も多いかもしれない。
私はあらゆる意味で結婚できない人間だから、自分の生活パターンを頑なに守り続けていて何の
問題もないが、もし長年一人暮らしをしていて、やっぱ結婚したいなぁ、と思う人は、どのあたり
まで相手に合わせるかを考えないといけないだろう。
前にも書いたが、怪奇映画コレクターの芦屋小雁は結婚したときに貴重なコレクションを処分させ
られたという。私と変な映画のどっちが大事なのよ、ということらしい。その後、離婚したが。
こんな女と暮らすリスクもあるわけだから、長年大事にしてきた趣味のある人は結婚なんかしない
方がいいかもしれない。
一人暮らしは一度はしてみるべきだけど、もし結婚するんだったら自分のスタイルができる前の
若いうちに二人で暮らし始めて、共通の生活パターンを形作っていくのがベストなんではなかろ
うか。
たいていは嫁さんの尻に敷かれて、自分がホッとできるのはトイレの中だけ、ということになる
んだろうけどね。