木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

平日のレイトショーでも、6割ぐらいの入り。なかなか人気があるみたいだ。
ネタバレしているので隠します。



前回の映画「日本シリーズ」は、ゴミの怪獣が出てきた時点で個人的にはダメだったので、今回は
どうなることやらと思っていたのだが、ちゃんと面白かった。
ゾンビが出てきたけど、ちゃんと笑いになってたし。


さすがに岡田准一を何度も生き返らせるわけにはいかないので、今回が完結編ということになって
いるが、できればあと20年ぐらいして、彼らが中年になった話も見てみたい。


この映画は、死者の鎮魂がテーマである。
最初は「フィールド・オブ・ドリームズ」のパロディかよ、と思ったけど、最後にはきちんと泣ける
話に持って行くあたりは、さすがに宮藤官九郎だ。


葬式は何のためにあるかというと、生きている者のためにある。
死んだ人間が戻ってきたら怖いから、きっちり送り出す儀式なのだ。


しかし、主人公のぶっさん(岡田准一)が死んだとき、仲間たちはきちんとお別れの言葉を
言えなかったし、葬式でも泣けなかった。
だから、彼らは野球の試合をして、よみがえったぶっさんを成仏させるのである。


22歳で死んだぶっさんは、永遠に22歳のままだ。
なのに、生きている人間はずっと歳をとり続けなければならない。
つまり、死んだ人間と生きている人間が会うのはフェアではない。
ていうか、話が合わなくなってお互いつまんなくね? ということだ。


例えば、人生のピークが高校生の時期だったとしよう。
ピークというより、一番たのしかった時期と言えばいいだろうか。
働かなくてもいいし、若いし、刺激的なことを共有できる仲間がいた、そんな時間のことだ。
ふつう、それを青春と呼ぶな。


そんで、青春の時期を過ぎたら、本当は社会で働かなければならないことになっている。
木更津キャッツアイ」のメンバーたちは、楽しかった青春をずっと引き伸ばそうとしていた。
ふつう、それをモラトリアムと呼ぶな。


実はマスター(佐藤隆太)だけはモラトリアムではなかったのだが、ワールドシリーズでは
離婚して店を畳んでおり、人生をリセットしている。
なんでかというと、自分の納得いかない形で結婚して飲み屋をやっていたから。
青春の不完全燃焼だったわけだ。


また、謎が多いうっちー(岡田義徳)の喋り方が普通になってたのが笑えた。
これまでの彼の役割は、仲間から一歩引いた形でサポート(?)するものだったが、自衛隊に入って
叩きなおされ、主体性を持ったことで青春を終わらせる。
うっちーは青春を傍観するためのモラトリアムだったわけで、青春の強制終了とでも言えようか。


ちなみに、うっちーを鍛える鬼教官役の栗山千明が素晴らしいドSっぷりを見せており、あん
ドーナツを片手に叱りとばすところなどはたまらない。
豪快な“ハンマー投げ打法”も必見である。


映画の前半に大活躍していたバンビ(櫻井翔)は、きっちり市役所に就職しており、自分の
青春にもけじめをつけていたようだが、モー子(酒井若菜)に振られたあたりに、まだモヤモヤ
していたものがあったのかもしれない。


アニ(塚本高史)は‥‥分かんねーw
下手したら引きこもりになっていたかもしれない。
だからアキバのメイド喫茶に入り浸っていたんだろうけど。


てなわけで、仲間にちゃんと「ばいばい」と言えたぶっさんは、外野の奥に消えていった。
青春の楽しい思い出を抱えてオッサンになっていくのは、ほろ苦いものがあるけど、生きている
人間はそうするしかないのだね。


私は死んでいくぶっさんがうらやましい。


本文と写真はまったく関係ありません

ノリo´ゥ`リ<あの、ウサギってなんて鳴くんですか?