生物学個人授業

生物学個人授業 (新潮文庫)

生物学個人授業 (新潮文庫)

私が高校生のとき、理科の選択は迷わず生物にした。
というのも、生物学だけは数式がほとんどなさそうだったからである。
(それほどまでに私は数学ができなかったし、今もできない)


ところが、当たり前だが生物学だって理系の学問であり、ちゃんと勉強するとなると、それは
難しいのである。
興味本位で池田清彦の「新しい生物学の教科書」を買ってみたものの、途中で挫折した。

新しい生物学の教科書

新しい生物学の教科書

高校生が分かる程度の内容らしいが、いやいや私にはついていけませんでした。


で、この「生物学個人授業」は、そういう難しさを南伸坊というフィルターを通して分かりや
すくしている。なので、読みやすいことは読みやすいのだが、当然フィルターを通しているの
で、詳しい部分や奥深い部分はろ過されず残ったままだ。


とはいえ、岡田節人が生物学の勘所をちゃんと押さえているおかげで、それほど軸はブレてい
ないように思える。素人だから本当はよく分からないけど。


まあ、この一冊だけで生物学が分かったような気になるわけはないので、この本で紹介されて
いるトリビアルなネタを、誰かに喋って自慢するのが一番かもしれない。


ところで本書には、生物が最初に誕生したときから現在まで生命は連綿と続いている、という
話が書いてあった。

「生命は絶えたことがない。何十億年も前に生まれてから、絶えたことがない。なぜ、絶えた
ことがないか? 
 自分の子どもが生めるからや。原核生物、さっきいうたバクテリアやファージはDNAが核
の中以外にある、単純なヤツ。これは殖えるだけや。一つの細胞が分裂しよる。分裂すること
で生命を連続させてるね。


 細胞核の中にDNAを閉じ込めた真核生物。そして、その仲間の多くの多細胞生物、つまり
一つの生物個体が数多くの細胞からできているような生きものでは、何が連続しとるかという
と、生殖細胞だけが連続しとります。これ大事なことですね。生殖細胞や。それ以外は体細胞
というんです。体細胞というのは一代で終わりでございます。生殖細胞、いつまでも絶えるこ
とがない」


なかなか壮大な話である。
何十億年前に生まれた一種類の生命が、現在では多く見積もって8000万種類にも多様化してい
るそうだ。その半分は昆虫で、しかも昆虫の半分は甲虫(鞘翅目)とのこと。
地球は昆虫の惑星といってもいいかもしれない。


なんで一種類だった生命が、ここまで爆発的に多様化したのかは謎だ。環境に適応したからな
のか、偶然の積み重ねなのか、よく分からない。


でも、こういう話を知ると、私のような人間も少しぐらいはいていいのかな、と思える。
何の役にも立たないオッサンが、もう少し生きていようかな、という気になっただけでも読ん
でよかったかな、と。


あと、自分の遺伝子を残したいと思って無理をして赤ちゃんを作るのも、巨視的に見ればあま
り意味がないというか、単なるエゴではなかろうか、という気がした。
だって、過去に生まれた命は、多くの生き物によって受け継がれているのだから、自分が特別
ユニークだと思うのは、錯覚でしょう。


それと、多様化することが生物の基本的なベクトルだとすると、単純化・独占化しようとする
経済活動は非生物的だといえるんじゃないかなぁ、とぼんやり考えたりする。
生物学を単純に経済にあてはめるのは間違いだと分かってるんだけど。


次は評判の「生物と無生物のあいだ」を読んでみよう。


本文と写真はまったく関係ありません

生物学的多様性の一例
川*^∇^)||<うちはこの中で一番年下だけど、一番背が高い
川´・_・`川<‥‥
从´∇`从<熊井ちゃん、身長のことは慎重に言わないと!