時をかける少女

時をかける少女 NOTEBOOK

時をかける少女 NOTEBOOK

ようやく松山でも公開されたので見に行った。
フツーに面白かったです。
できれば真夏に見たかったけど。


いちおうネタバレしているので隠します。

どう言えばいいのだろう。
オッサンの妄言なのだが、やはり原田知世の「時かけ」を超えることはなかった。
たぶん、私は10代で原田知世のバージョンを見てしまったので、後からどんなに
素晴らしい「時かけ」を見たとしても、ピュアな気持ちで受け止められないのだ
と思う。


それでも、この映画はみずみずしかった。
郊外の街や学校のディティールを、これでもかといわんばかりにリアルに描いており、
こういう手法は「耳をすませば」以来かもしれない。


基本的なストーリーは原作と同じなのだが、この映画ではヒロインがかなり早い段階で
自在に過去に戻ることができるという点が違う。
(きっかけは踏み切りに飛び込む事故だけど)


この戻り方が面白くて、なぜか前回りや後ろ回りをしながらずっこけるのである。
せっかくの力を、妹に食べられたプリンを食べるとか、カラオケを何度も延長するとかの
すごくつまんないことに使う場面が面白い。
そういう、はっちゃけたところが21世紀の「時かけ」っぽいなぁ、と思う。


引っかかったのは、未来人が現代に来た理由である。
原作では環境破壊のために貴重な動植物を採取しにきた、というシビアな設定になっていた
はずなのだが、今回は博物館の絵を見るためだった。
だったら、学校に通わなくてもよかったんじゃね? 


それから、根本の設定を疑うのもどうかと思うが、あんな急な下り坂のところに踏み切りを
敷設するだろうか。普通、高架にしないか? 
ま、そうじゃないとそもそも物語が始まらないのだから、言うだけ野暮なんだけど。


あと、これはモテないオッサンの僻目なのだが、最近の女子高生ってああいうもんなの? 
いい男と、恋愛を意識しないでフツーにつきあえるもんなんだろうか。
後半から恋愛ドライブがかかってくるのだが、ヒロインはどちらとも選ぶことができた
んじゃねーかと思うです。


それはつまり、原田知世バージョンの「時かけ」でも、尾美としのりの立場で見ると、
幼馴染だった女の子が、未来から現れた奴に奪われて(?)しまうという話になるわけで、
もし何もなかったら原田知世尾美としのりがつきあう未来があったかもしれないの
ではないかと。


ほら、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も、いじめっ子のビフがマーティの母親と
結婚した未来だってあるわけで、正しいとされる結末も、ビフから見れば最低な終わり
方でしょう。


アニメ版「時かけ」でも、消火器を振り回した少年は、結局どうなったか触れられない
まま終わったのだが、きっとモテないままだったんだろうなぁ、と思う。
脇役なんだから、考えすぎだけど。


結局、高校生の恋愛は移ろいやすく純粋だからこそ、はかなく終わってしまうことが
分かっている。卒業してからも付き合うことなんて稀だろう。
だからこそ、時間を超えて相手を想う「時かけ」のラストは胸に沁みるわけだ。


もっとも、本当に相手のことをずっと想い続けていると、ヒロインから「魔女おばさ
ん」なんて呼ばれる人になってしまいますよ、と監督は言いたかったりして。
原田知世にキュンとなった世代としては、ちょっと皮肉っぽくも見えるのです。


本文とイラストはあまり関係ありません