雨に唄えば

雨に唄えば [DVD]

雨に唄えば [DVD]

なぜか NHK BS2ミュージカル映画を何本も放送していたので、つい見てしまった。
ジーン・ケリー主演のミュージカルで、もっともポピュラーなのは、この作品と
巴里のアメリカ人 [DVD]」だと思う。


雨に唄えば」の中で私がすげぇな、と思ったのは、ドナルド・オコーナーが
踊るナンバー“Make 'em Laugh”だ。


もう、はしゃぎすぎとしか言いようがないヴォードビル芸だが、YouTube の映像で
3分40秒目からの、壁に向かって駆け上がり、くるっと一回転して降りるパフォー
マンスに痺れた。
これができる芸人を、他に知らないのだが、誰かやっている人がいるだろうか? 


ジーン・ケリーは、良くも悪くも米国らしい俳優だった。
エネルギッシュで陽気で、とても快活なイメージである。
彼の笑顔を見ると、1950年代の前半の、米国が無邪気に未来を信じていた時代に
ふさわしい輝きがあり、まぶしくさえ感じる。


彼が亡くなったとき(1996年)、CNNは「ジーン・ケリーさんが亡くなりました」と
伝えたあと、いっさい言葉を差し挟まず、“Singin' in the Rain”を唄う場面を
放送したという。粋な追悼だ。


ただ、ミュージカル・ダンサーとしては、彼はフレッド・アステアの足もとにも
及ばなかったと思う。
ジーン・ケリーの踊りは地球の重力に縛られていたが、フレッド・アステア
重さを感じなかった。


Puttin' on the Ritz


もっとも、なんとなく見てもフレッド・アステアの凄さには気がつかないかも
しれない。
私が愕然としたのは、フレッド・アステアのダンスをスローモーションで見たとき
だった。まるで、月面で踊っているような余裕があった。


私が知る限り、ダンスでフレッド・アステアを目指した男はただ一人、
マイケル・ジャクソンである。
しかし、マイケルといえども、踊りの中で重力をなくすことはできなかった。
せいぜい横に滑らせただけだ。



夜中にフレッド・アステアの「バンドワゴン」という映画をやっていた。
破綻しかけたミュージカルを立て直す、という内容で、「雨に唄えば」と構造が重なる
作品だ。
こういう劇中劇があるミュージカル映画って、意外と多いのかもしれない。


50年代のMGMミュージカル映画は、人とセットにいま思うとバカバカしいほどの
金をかけて制作されている。
もはや、こんな手のかかった映画が二度と作られることはないだろう。
この時代はCGがなかったので、根性で撮影するしかなかったのだ。
ミュージカル映画を舐めちゃいかんよね。


ちなみにジーン・ケリー

和泉元彌って

似てると思いませんか?