文・堺雅人

文・堺雅人 (文春文庫)

文・堺雅人 (文春文庫)

俳優が書いたエッセイはあまり読んだことがないのだが、読みやすくて面白かった。
すらすら読めるように書くのは、なかなか技術がいると思うので、きっと何度も推敲
したのではなかろうか。


その技術のひとつとして、漢字を開いているのが分かる。
眠くなるを「ねむくなる」とか、思うを「おもう」というように、なるべくひらがな
にしている。


もちろん、全部ひらがなだと読みにくいので、きちんと計算して漢字とひらがなの
バランスをとっていると思うが、すらすら読んでいるとなかなか気がつかない。
学校の作文だと、習った漢字は使いましょう、と指導されるような気がする。



俳優の仕事は、普通の人が行かないところに行ったり、珍しいものを食べたりする
ことが多いので、日常がすでに面白いはずである。
なので、ネタには困らないと思うが、堺雅人はあまりそういうトピックを選んで
いない。


一貫して、演じるとはどういうことか、という問いを投げかけているような気がする。


おそらく、大スターのように、どうしても目立ってしまうし、本人も目立ちたい役者
ではなく、わりと地味だが芯を食った演技をするタイプだからだろう。


私の印象では、森雅之小日向文世堺雅人という系譜の役者になるのではなかろうか。
30代でブレイクした堺雅人と、50歳前でようやく売れた小日向文世とは違うかもしれ
ないが、演技のタイプとしてよく似ていると思う。顔もだが。


どこかで親子の役をやってもらえたら嬉しい。
そのときは、岩城滉一反町隆史も同時に親子の役だったら面白い。
あと、遠藤憲一宮迫博之とか。