- 作者:薫, 高村
- 発売日: 2010/03/29
- メディア: 文庫
夢中になれるのではなかろうか。
私はどちらでもないから、最初からお客さんではなかったのだな。
だから、ずっとおっさんの愚痴を聞かされているような感じがして
ページをめくるのがきつかった。
大企業の社長や新聞記者や刑事のディティールがすごくて、みなさん
こんなに忙しくて寝る暇があるのですか、と心配になった。
ただ、暇つぶしに「チボー家の人々」を読むような刑事がいるもの
だろうか、と疑問に思った。合田刑事はキャリアではないはずだが、
趣味はバイオリンだったり、なぜかハイカルチャーを身に着けている。
一方、「合田」の対位法として「半田」と名付けられた刑事は、仕事を
サボって競馬やパチンコをするキャラクターである。
彼が犯罪者の一味となって、最終的に合田と対決するのが終盤の山場だ。
おっさんの愚痴ばかり、と言ったのは、意図的に女性の内面がほとんど
語られていないからだ。
その象徴として知的障害者の「レディ」が描かれている。
大企業や警察・検察に対して、女性はレディのように排除されている
ことを伝えたかったのかもしれない。
いや、それは深読みのしすぎで、単にこの作品のベースがBL小説だから
かもしれない。
終章での合田と加納の関係を読んで、これそういう話だったの、と
驚いた。やはり私はお客さんではなかったのである。
最後まで読んでも、結局あのお金はどうなったのか、レディの父親は
どこに行ったのか、根来の死体は出てきたのか、などなど、分からない
まま終わったことが多くて消化不良だった。
全部書いてしまうと余韻がなくなるからだろうけど、もやもやした
読後感は否めない。
なぜか、これを読むと妙にキリンラガービールを飲みたくなったので
買ってきたのだった。