
- 作者:司馬 遼太郎
- 発売日: 1985/07/01
- メディア: 文庫
精力的に訪れている。
ただ、史料的には松前藩のものが多いので、ほとんどは道南の描写である。
ちょうど「菜の花の沖」の連載が始まったころと重なっているので、高田屋
嘉兵衛についてもざっくりと書かれている。
後半は樺戸集治監の囚人の話題や屯田兵の話に驚かされる。
ほとんど奴隷のような人々が開拓を担っていたということだ。
特に囚人を働かせることについて、金子堅太郎の文章を引用している。
金子堅太郎といえば「坂の上の雲」で米国のルーズベルト大統領と
ハーバード大学で同窓だった縁を通じて、講和交渉で活躍する人だが、
その人でさえ、囚人を働かせることはコスパがいい、というような
言葉を残している。
司馬遼太郎は、金子のような高等教育を受けた超エリートでさえ
こんな考えだったのか、と嘆いているが、実はハーバード大学で
学んだからこそ、奴隷をうまく使うことを是としたのではないか。
現在の米国では、刑務所が民営化され、収監された罪人を働かせて
大儲けしている企業がある。
むしろ米国のエリートはそういう「合理的」な教育を受けているのであろう。
↓
もうひとつ司馬遼太郎が指摘しているのは、明治期における北海道の
住宅の酷さである。
寒冷地なのに、西日本にあるような家を建てたものだから、入植者が
次々と死んだ。
寒さは気合と根性で乗り越えろ、という考えでもあったのだろうか?
そしてこの手の間違いは現在も続いていると思う。
【誤植】
p167 2行目 ☓ セキス炭酸ナトリウム → ○ セスキ炭酸ナトリウム
9刷りでも直ってないが、新装版ではどうなのだろうか。