世界の陰謀論を読み解く

世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)

世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)

私の世代が初めて陰謀論に触れるのは、たいてい雑誌「ムー」であった。
いまの子はネットで知るのだと思うが、ムーが休刊になっていないという
ことは、底堅い需要がまだあるからだろう。


陰謀論は、私だけが裏に隠された秘密を知っていて、世界を救うために
戦っているという高揚感をもたらすが、無論それは中二病である。


中二病をこじらせた大人がわりと多いことを、この本を読んで知った。
イルミナティという言葉も初めて見た。


著者は宗教学が専門だそうだが、陰謀論を論破するためにたくさんの
トンデモ本を読んでいる。さぞ辛い作業だったと想像するが、もしか
したら楽しかったのかもしれない。


私が不思議だったのは、米国で出版された陰謀論の本が、かなり邦訳
されているということだ。
出せば一定の部数が必ず売れるからだろうけど、陰謀論を本気で信じ
ている人が日本にも多いと思うと、うんざりする。


そういえば、塾の生徒で「アポロは月に行かなかった説」をどこかで
見聞きして、得意げに話している子がいた。
いまごろ何をしているだろうか。


陰謀論が危険なのは、権力を持った人間が信じてしまい、実社会に
影響を与えることだろう。
本書でも日本のオウム真理教や、米国のパット・ロバートソンの例
が挙げられている。


陰謀論を笑える知性を身につけなければならん、ということか。


私の印象では、陰謀論一神教の社会で広がるようだ。日本はそれを
輸入しているという感じがする。
中国やインドでも、有名な陰謀論があるのだろうか。あまり聞いた
ことがないような気がするのだが。