昭和っぽいジメッとしたテイストの映画だった。
主役の堀北真希の美魔女っぷりは見事なもので、これだけを見るために
映画館に足を運んでもいいのではないか、と思う。
さて、ここからは気になったところを書く。
・原作ではゲーム開発や磁気カード詐欺など、80年代の電子機器の進化と
パラレルな犯罪が描かれていたが、映画では一切ない。
小説の面白さをほとんど削いでいるように思える。
・主婦売春は出てくるが、事故死した女を屍姦するエピソードはカットさ
れており、これはドラマ版ではあったのだが、残念なことである。
・桐原亮司の恋人の薬剤師を演じる粟田麗が、自ら青酸カリを飲んで死ぬ
場面は、異常にリアルだった。私が見た映像作品の中でもベスト3には
入る服毒演技だった。なんだったんだろう?
・結婚した雪穂の義理の父が篠田三郎で、雪穂のブティックのパトロンに
なる老人が黒部進というキャスティングだった。
つまりウルトラマンタロウとウルトラマンの共演である。
この遊びに気づいた人はたくさんいるだろう。
・雪穂の友人で、のちにレイプされてしまう役の緑友利恵のおどおどっぷ
りが素晴らしい。ヘアスタイルもしっかり時代考証されていてよかった。
・刑事役の船越英一郎が出ると、どうも二時間ドラマみたいになる。
最後も崖っぷちならぬビルの屋上で犯人と対話している。
パロディを狙っていたとしても笑えなかった。
結局、小説を超えるような映像作品は、いまだに作られていない。
「模倣犯」もそうだった。
「砂の器」が数少ない成功例だろうか。
平日のレイトショーなので、客は私を含めて3人だった。
興行成績もあまり芳しくなさそうである。