- 作者: 米澤穂信
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- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
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- 作者: 米澤穂信,片山若子
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秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
- 作者: 米澤穂信,片山若子
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ミステリーの部分は「な、なるほどー」としか感想が言えないので申し訳ない
のだが、物語の緻密な構成と描写は見事だった。
↓
「冬期限定」が出て完結しないと何も結論づけられないのだが、ここまで読んだ
感想を言うと、私にとってはミステリというよりはホラーだった。
「春期限定いちごタルト事件」では、「氷菓」みたいな高校生の日常謎解きもの
かな、と油断して読んでいた。
この巻はキャラクター紹介のようなものだったのだ。
次の「夏期限定トロピカルパフェ事件」になると、ちょっと物騒な誘拐事件が
発生するものの、読者は甘いもののトリビアルな情報に翻弄されてしまう。
が、終盤にヒロインの小山内ゆきがとんでもない女だということに気付かされる。
この時点で主人公の小鳩常悟朗は彼女との関係を解消する。
そして「秋期限定栗きんとん事件」では、放火事件をめぐってお互いに暗躍する。
もはや小市民でも何でもなくなっていることが分かった二人は、再びパートナーに
なることに同意する。
↓
最初は、自分だけが特別だと思う中二病をさらにこじらせて普通の人のふりをする
高二病の話か、と思っていたが、「夏期」で小山内ゆきは他人を自分の利益のために
思い通り動かす人であり、「秋期」で小鳩常悟朗は他人を愛することができない人で
あることが明らかになる。
つまりこれは二人のサイコパスの物語である。
そりゃあ、自分がサイコパスだと分かったら、なるべくそれがバレないようにする
だろう。
私がホラーだと思ったのは、小山内ゆきに近づく者は悲惨な目に遭うからである。
なんというか、外見は小動物系のレクター博士みたいなものだから。
物語のバランス上、サイコパスに振り回されるのは薬物中毒者だったりビッチだったり
凡庸な野心家だったりと、どこかしら悪い人でなければならない。
そうでないと、読者は主人公たちに感情移入できないだろう。
けれど、私は堂島健吾以外にまともな人がいないので、誰にも感情移入できなかった。
多くの読者も、主人公の語り口に傲慢なものを感じて嫌になったのではなかろうか。
うまく言えないが、弁護士の資格を持っているのにそれを隠して、他人が困っている
のをニヤニヤ眺めているような感じというか。
↓
それにしても、なぜ米澤穂信はこういうキャラクターを作ったのだろう?
古典部シリーズでは、いかにもオタクが好みそうな千反田えるというヒロインが
活躍したが、それ故に窮屈に感じたのかもしれない。
もう私の単なる妄想だが、ラノベ的な場所でデビューしたけれど、もっと一般向けの
小説を書きたいと思ったので、古典部シリーズでついた読者を切ろうとしたのでは
ないか。
ヒロインの小山内ゆきは、古典部シリーズでいうと入須先輩と同じ種類に属し、
千反田えると真逆のキャラクターである。
ああいう腹黒で男を手玉に取る女性は、ラノベでは悪役である。
そういうキャラクターを敢えてヒロインにしたところに、米澤穂信の底意地の悪さが
出ているような気がする。
なので、この作品をアニメにしようとしても、企画の段階でつまずくのではないか。
かといってドラマ化もちょっと地味な気がする。
(小山内ゆきにはアンジュルムの福田花音がぴったりなような気もするけど、これだと
単なる悪口だ)
↓
あと、本当にどうでもいいことだが、「春期限定いちごタルト事件」の解説がひどい。
もっとまともな人に頼めなかったのだろうか。
「夏期限定トロピカルパフェ事件」からはちゃんとした人が書いているみたいで、
「秋期限定栗きんとん事件」では辻真先になっている。
「冬期限定」では誰になるのだろうか。