金曜ロードショーで「ソロモンの偽証」を見た。
友だちが面白いと言っていたので映画館で見ようと思っていたら終わっていた
作品だ。
先週の前編を見て、原作も読んでみようかなと思ったら文庫本で6冊もあった
ので諦めた。
というわけで、以下はテレビ放送されたものだけを見た感想。
学校で中学生だけが模擬裁判をやる、という設定は、1960年代ぐらいの青春映画
ならわりとリアリティがあったかもしれないが、1990年だとちょっと厳しい。
おそらく原作では、そのあたりを丁寧に描いて読者を納得させているのだろう。
それでも、原作の熱量のせいか、映画化されたものでも見応えがあった。
何より演じている中学生役の子たちが、すれてなくて良かった。
一歩間違えると中学生日記みたいになってしまう危うさがスリリングだった。
↓
自殺した柏木という生徒は、他人を偽善者だと非難したり、人殺しの血が流れて
いる人間は不幸になると決めつけたり、ずいぶんとひどいことを言っている。
なので、視聴者は彼が死んでもあまり同情はしないだろう。
では、なぜこういうキャラクターを自殺させたのか。
そもそも、学校で中学生だけが模擬裁判をやるというのが、いかにもリベラルが
好みそうなことだが、その原因になったのは、自分のことを棚に上げて他人を
批判ばかりする子供である。
私が勝手に深読みすれば、柏木は左翼の象徴である。
もはや自殺するしかないほど追い詰められた左翼を乗り越えて、それでも生きて
新しい連帯を作っていこう、というメッセージだったのではないか、と妄想する。
こんなことを感じたのは私だけだと思うが。
小説では、もっと詳しく柏木の背景を語っているだろうから、私の思いつきは
的外れだろうけど、テレビを見ただけだと、こんな変な中学生がいるものだろうか、
と思ってしまう。
↓
あと、どうしてもスッキリしないのは、犯人扱いされた大出という少年の父親が
どうなったのか、映画では描かれなかったことである。
あのDV男は、ずっとあのままなのか、それとも何らかの罰が下されるのか。
そのまま暴力を振るい続けているとしたら、救いがない。
もうひとつは、黒木華が演じた教師の隣に住んでいた女である。
なぜ彼女が黒木華を恨むのかも、映画を見ただけではよく分からなかった。
後篇で、ドアを開けたらいきなりワインの瓶で殴られたのには、本当に驚いた。
しかも、そのあと加害者の女はどうなったのか、全く触れられておらず、これも
モヤモヤした。
やはり小説を読むしかなさそうである。