カレーライスの謎

自炊を始めてから20年あまり、年に20回ぐらいはカレーを作っているから、
これまでに400回ぐらいは調理しただろうか。


しかし、いまだに会心の出来にはならない。
市販のカレールーを使っているからなのか、とも思ったが、外で本格的な
カレーを食べてみても、どうもピンとこないのだ。


かといって、いちからスパイスを調合したり、高級な食材を使ったりする
のも面倒だし、そういうのは「家カレー」の本質からは外れているような
気がする。


この本では、日本のカレーライスがどのように普及したのか、よく調べて
書いてあり面白かった。
ただしメーカーにヨイショしているように見える部分もあり、書き手の若
さを感じずにはいられない。
できれば最後に、おいしい家カレーのレシピを載せてほしかった。


著者もあとがきで書いているように、もっと商品開発の技術的なところや、
広告宣伝についても詳しく記述していれば、評価は上がったと思う。


それに、中国や本場のインドでも、日本式のカレーは人気が出始めている
はずなので、海外での普及度合いにも一章割いてほしかった。


英国では植民地の影響からか、インド料理店がたくさんあるそうだが、日
本のカレーは人気があるのだろうか。
もしかすると、欧米人はふだん米の飯を食べないから、日本式のカレーは
あまり好みではないのかもしれない。


しかし、日本に長期滞在している外国人で、日本式のカレーを食べたこと
がない人は少ないはずだから、どのくらい人気があるのかを調査してもよ
かったのではないか。
寿司の次はカレーだ、という意気込みで調べてみてほしかった。


もうひとつ気になったのは、講談社現代新書の「カレーライスと日本人」に
ついて一行も記述がなかったことだ。

カレーライスと日本人 (講談社現代新書)

カレーライスと日本人 (講談社現代新書)

おそらく、日本式のカレーについて考察した本はこれが嚆矢だと思われる
が、無視するのはいかがなものかと思う。
私が担当編集者なら、真っ先に指摘するのだが‥‥