激流中国

「密着 中国共産党地方幹部」というサブタイトルがついた今回の激流中国だが、抱えている
問題は日本とそれほど変わらないように見えた。


国営企業に代わる企業を誘致しようと東奔西走する撫順市の書記と、産業構造が変わり農業か
ら工業や不動産業で成功した広東省の小さな村の書記が取材対象になっており、二人とも苦労
の連続だった。


日本と中国で共通の問題は、かつては国土の均衡ある発展を標榜していた中央政府が、手のひ
らを返して、地方のことは地方でやりなさい、と突き放していることである。
これもグローバリゼーションの一環なのか。


広東省の小村の書記は、アダム・スミス国富論を読んでいた。
取材者が、共産主義と矛盾しませんか、と質問すると、確かに矛盾するけれども、最も小さい
コストで最も大きな利益を生むシステムなら、共産主義でも資本主義でもどちらでもいい、と
言ってのけた。


もともと中国人はこういう現実主義的なところがあるので、その発言自体にはそれほど驚かな
かったが、この発言が放送されたということは、中国共産党が知っているということである。
建て前としては、共産主義が最も正しい理論であることを言い張らねばならないのだから、こ
の放送後、広東省の小村の書記がどうなったか、ぜひ知りたいところだ。


ただ、このまま貧富の差が広がると危ない、という認識は徹底して共有されているみたいなの
で、福祉を充実させる方向で行政をやっていくのだろう。
私は、それぞれの地方の行政トップである書記たちが、阿Qたちを何とか導いていく雪かき仕
事をしている印象を受けた。
彼らは、文化大革命のダメージを免れた世代なのだろうか。


10年後、果たして中国がどうなっているのか分からないけれど、内戦になったり餓死者が出た
りしないように祈るばかりである。


本文と写真はまったく関係ありません

周恩来はいまの中国をどう思うだろうか