- 作者: 養老孟司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03/28
- メディア: 文庫
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思えば山本義隆が「磁力と重力の発見」で賞をもらったとき、選考委員の養老孟司は論評を拒否
していた。異様なことだと思ったが、この本を読むと、なるほど無理もないな、と思う。
私が読む本が偏っているせいか、団塊の世代の人々に関してはロクな話を聞かない。
個人的に知っている団塊の世代の人も、この根拠のない自信はどっから来るんだろう、と思うよ
うな人ばかりだった。
しかし、考えてみれば団塊の世代だけが突出して目立っているけれど、他の世代だって特に自慢
できるようなことはしていないのである。
ブルセラ・援交が真っ盛りだった12年ぐらい前に売り手と買い手だった人々は、いまどうしてい
るだろうか。シレッと家庭を持っているのではないだろうか。
あるいは、中学生のときいじめをしていた人は、自分がどんなにひどいことをしたのかすっかり
忘れて人生を楽しんでいるかもしれない。
過去をなかったことにするのは日本人の特徴だ、と養老孟司はくりかえし語っている。
それが悪いといっているのではない。
ただ、多くの日本人は自分にそういう特徴があるということを考えてないだけだ、というのだ。
だから何なのか?
とりあえず自分で考えろ、ということだろう。
けれども、考えない人が集団になるから、全共闘や援交がブームになるのではないか。
つくづく、ビートたけしが作った“赤信号 みんなで渡れば怖くない”は至言だと思う。
こういう集団がゴリッと一億人ほどいることが、他の国の人にとっては気味が悪いのかもしれな
い。そうはいっても、いるものはしょうがないのだから、日本人ですけど何か? と言い返せる
ぐらいの強さを持っておかなければいかん、ということか。