さらば朝日ソノラマ

朝日ソノラマが9月末で解散するそうだ。
私にとって朝日ソノラマといえば、ソノラマ文庫である。
中学生のころ、古本屋で50円ぐらいで売っていたのを次から次に買ってきては読んでいた。


83年の春休みだったか、「クラッシャージョウ」が映画化されて、けっこうヒットしたと思う。
その原作になった高千穂遥が書いた小説は、朝日ソノラマから出版されていた。
私も何冊か持っている。カバーや挿絵は安彦良和が描いており、ファーストガンダム世代
にはたまらない魅力があった。


たぶん、ソノラマ文庫のピークはこの時代だったのではないかと思うが(あるいは富野由
悠季の『機動戦士ガンダム』が出た頃か?)、私が夢中になったのは「クラッシャージョウ
シリーズではなく、「透明少年」とか「イチコロ島SOS」なんかを書いていた加納一朗
の小説だった。


カバーと挿絵は祐天寺三郎で、このイラストもユーモアのある内容を膨らませていたように
思う。
ちょうど、現在のライトノベルの元祖のようなもので、SFやミステリ小説の入門篇として
の位置づけだったはずだ。


中学時代に読んだきりだから、内容はすっかり忘れてしまっていたが、改めて読んでみると
意外としっかりしていて面白い。
「透明少年」なんて、空腹のあまり台所の調味料を合わせて舐めたところ、透明人間になっ
てしまった、という話である。ちょっと藤子テイストがないだろうか? 


加納一朗は、青井是馬(あいおこれま)と荒馬(あらま)という兄弟を主人公にしたシリー
ズを書いており、基本的には、この間抜けな兄弟がいろんな事件に巻き込まれては運よく助
かる、という物語である。


是馬荒馬シリーズは、兄が中2で弟が小6だったと思う。このあたりの設定は小説によって
違っていたが、だいたいそのくらいだ。
昔はきょうだいがいる家庭が当たり前だったから、読者も話に入りやすかっただろう。


加えて、兄弟で会話するから物語にテンポが出てくる。
地の文ばかりでは退屈してしまうだろうから、少年向けに読みやすさも考慮しているのだ。
そのあたりも、現在のライトノベルに近いものがあるだろう。


このような少年向けの小説は「ズッコケ三人組」とか「かいけつゾロリ」に受け継がれて
いるが、ソノラマ文庫のような多様性は失われてしまったようだ。
その多様性は、ゲームやマンガやライトノベルに分散してしまったのだろう。


ソノラマ文庫加納一朗の素朴な物語が味わえないのは、学校の近くの駄菓子屋がなくなっ
たような寂しさがある。
加納一朗のファンサイトはこちら(


本文と写真はまったく関係ありません

たとえば、こういう美人姉妹探偵シリーズなんて読んでみたいでしょ?