*[映画]きみの色

月曜日のレイトショーで観客は私を含め2人。
もっと多くの人に見てほしい作品である。


すごく繊細な作品だった、というのが見終わった感想だ。
私は初老の男なので、もはや登場人物たちの心情が鋭く
刺さるわけではなく、親目線で(がんばれ!)と応援したく
なるような映画だった。



山田監督は、なぜキリスト教を枠組みに使ったのか、
という疑問が見ている間ずっと浮かんでいた。
ヨーロッパのアート系映画に近いスタンスにしたのは
プロデューサーの戦略があったからなのか、それとも
監督本人の志向なのかも訊いてみたい。


もうひとつ、きみちゃんがどういう経緯で古本屋の
バイトをするようになったか、が敢えて語られて
いないのも気になる。
あの「しろねこ堂」は誰の店なのか、すごく謎だ。




そういえば、これは「おっさんの出てこない映画」
だった。キリスト教系の女子校が舞台なので当然なの
だけれど、おそらく意図的に家父長制の役割を果たす
キャラクターは排除されている。
というか、それがキリスト教の神様なのだろう。


唯一の男性キャラであるルイくんも、マッチョな
感じと正反対で、きみちゃんへの恋愛感情も抑制
されていた。
これはきみちゃんの方も同じで、トツ子が二人の
関係を絶妙な間合いで引き寄せたり遠ざけたり
している。無意識にだが。


そこからクライマックスの学園祭の演奏を経て、
フェリーを追いかけて堤防を走るきみちゃんに
感動してしまうのだ。そのときトツ子は何を
していたっけ? 後を追っていたんだったか。





だが、他人の色が見えるというトツ子の共感覚
具体的に物語のトリガーになったり問題を解決
していくわけではない。
そこが物足りないと思う人もいるかもしれないが、
お話の導入と締めでうまく機能しているのでは
なかろうか。



この学校はどこにある設定なのだろう、と見ていて、
瀬戸内のどこかかな、と思ったが、エンドロールを
見ると長崎でロケハンしていたことがわかった。
ということはルイくんがいるのは五島列島のどこか
なのだろうか。


そしてトツ子の実家はおみやげの明太子から福岡県と
思われるが、なぜ彼女が長崎の女子校の寮に入った
のか、という理由も説明されていない。


思春期の少年少女たちの心にフォーカスしているの
だから、余計な説明は不要ということなのだろう。


若い人たちがどう感じたのか、キリスト教圏の人が
どう思ったのかが知りたい。
もしかしたら日本よりもヨーロッパで受けるかも。