表現したい人のためのマンガ入門

マンガ入門 (講談社現代新書)

マンガ入門 (講談社現代新書)

この本は、「マンガ入門」とあるが、しりあがり寿というマンガ家の自伝として読んだ
方がいいのかもしれない。


しりあがり寿のマンガを初めて読んだのは、少年サンデー創刊25周年記念増刊号に載った
「流星課長」だったと思う。
なんか変な絵だなぁ、と思ったけど、妙に面白かった。


当時はそれ以外、何の情報も得られなかったから、しりあがり寿というマンガ家は
謎のままだった。何歳かも、他にどんなマンガを描いているかも分からなかった。


何年かしてから、江口寿史が何かのマンガに「パーティでしりあがり寿に会った」という
話を描き、その中に似顔絵があったのを読んだ。
いまは本人の写真が公表されているから、その似顔絵が割りと似ていることが分かる
のだが、当時は(これが‥‥しりあがり寿?)としか思えなかった。


さらに何年かして、しりあがり寿という人の詳しいプロフィールが分かり、へぇ、キリン
ビールの社員だったんだ、と驚いた。
その頃だったか、やはり少年サンデー増刊か30周年記念号に「流星課長」の続編
「流星次長」が掲載され、満身創痍の流星次長にちょっと涙したものだった。


私はしりあがり寿の有名な作品を全て読んでいるわけではないので、良い読者とは
言えない。
サブカル系のオシャレっぽい人たちに人気があったのも、手に取りづらかった
理由のひとつだ。


それでも、この「マンガ入門」を読むと、どういう意図でどういう作品を描いてきたかが
赤裸々に語られており、ちょっと読んでみようかなぁ、という気になる。
そのあたりは、さすが一流メーカーの広告を担当していただけに、きっちり分析してあって
面白かった。


もしかしたら、しりあがり寿のマンガで最もよく知られているのは、朝日新聞の夕刊に
掲載されている「地球防衛家のヒトビト」かもしれない。
朝日新聞はどういう思惑で仕事を依頼したのか分からないけれど、毎日きちんと、あえて
新聞の4コマらしい作品を描き続けてきたのはすごいと思う。
余談だが、しりあがり寿が新内閣の閣僚の似顔絵を描いたら、すげー面白いかもしれない。


この本を読んでも、しりあがり寿のようなマンガ家になれることはないと思うのだが、
それは逆に言えば、彼がワンアンドオンリーの作家であるということの証ではなかろうか。
絵を真似してみるといいけど、絶対に彼のような線を引けないはずだ。
素人が見ると下手くそに見えるかもしれないが、実はすごく上手いのだ。
(だって、基本的なデッサン力のない人が美大に合格するわけがないじゃないですか)


当たり前だけど、マンガ家で成功している人は、基本的にマンガを描くことが好きである。
もう嫌だなんて言いつつも、また絶対に描きたくなる人だけが、マンガの神に愛されるのでは
ないか。
しりあがり寿は、間違いなくその一人だと思うのです。


本文と写真はまったく関係ありません

||c| ・e・)<カメ、その絵なに?
リd*^ー^)<バクですよぅ、バク