タッチ

タッチ スタンダード・エディション [DVD]

タッチ スタンダード・エディション [DVD]

テレビで放映されているのを見た。
手堅く作ってんなぁ、という印象でした。
ただ、物語が「すでに皆様ご存知の」という語り口だったので、原作のマンガを知らない人が
見たら、ちょっと混乱するかも、と思った。
(なんで南ちゃんは最初から神宮球場で応援しなかったんだろう、とか)
あれだけ長い作品を2時間以内にまとめてるから当然なんだが。


浅倉南に限らず、あだち充のマンガの少女というのは、何を考えているのかよく分からない
ところがある。
少年マンガのヒロインだから、主人公の少年からの目線で描かれているのは当然だ。
思春期の少年にとって、憧れの少女は何を考えているのか分からないものだし。


だから、浅倉南のキャラについて、リアルな女ではないとか言うのは野暮の極みだということは
分かっている。
分かっているのだが、ひとことだけ言わせてほしい。


南ちゃんは(もし達っちゃんに振られたらどうしよう?)と不安になったことはないの
だろうか? 
自分が好きになった男の子は、必ず自分のことを好きでいてくれるはず、という信念は
どこから来るんだろう。


原作のマンガでは、南ちゃんはラブレターを当たり前のようにもらうモテ系の女の子である。
そして、幼馴染の格好いい男の子(和也)がいて、四六時中いっしょにいるわけである。
おまけに、私だけが価値を分かっている=精神的に独占できる男の子(達也)もいるのだ。
こういう環境だと、たしかに愛されない不安というのはないのかもしれない。


【追記】
あれから気になって「タッチ」の単行本を読み返してみたのだが、ラスト近くになって
唐突に人気アイドルが上杉達也に接近するエピソードがあった。
南の心理はここでもハッキリしていないが、不安になったことを思わせる描写はある。
あだち充、抜かりはないのである。


そこへきて、長澤まさみ浅倉南というキャスティングである。見事としか言いようがない。


セカチューを読んだとき、なんじゃこのあだち充みたいな話は、と思ったことは前に書いたと
思うのだが、その映画版のヒロインが長澤まさみだった。
この白血病で死ぬ少女も、何を考えているのかよく分からないが、愛されることは疑いもしない
というキャラクターだった。


たぶん、長澤まさみには、そういう役がハマるのだろう。
現実に浅倉南がいたとしたら、これほど恐ろしい女もいないと思うのだが、長澤まさみが演じる
とイヤミなく見られる。
そういう透明感が、彼女の人気のひとつなのでしょう。


しかし、タッチの続きがあったとしたら、たぶん上杉達也浅倉南は一時期付き合うものの、
死者の影がいつまでもつきまとうので別れてしまうだろう。
達也は性的に不能になるかもしれないし、南も冷感症になるやもしれぬ。
と、夢も希望もないことを書いておしまい。