エルフ17

エルフ.17 (Volume1) (CR comics)

エルフ.17 (Volume1) (CR comics)

山本貴嗣というマンガ家は、たぶん編集者と妥協できない人なのではないかと
思う。
いい腕を持っているのに、自分の描きたい作品を追求していったために
メジャーにはなれなかった。
実に惜しい。


彼は、ハードSF・中国の古典・ハードSMが大好きである。あと格闘技も。
そのウンチクは、読んでいて面白かったし、よくこういう発想ができるなぁ、と
感心するのだが、悪く言えば読者を選ぶ傾向もあった。


この「エルフ17」というマンガは、ちょうど彼がメジャーかマイナーかの岐路に
立っていた時の作品だと思う。
ここで、自分をちょいと曲げて、売れ筋の路線へ行っていれば、ゆうきまさみ
ぐらいはメジャーになっておったのではなかろうか。


実は、山本貴嗣小池一夫劇画村塾の出身である。
同じ劇画村塾出身の高橋留美子のマンガに、メカを描いたこともあるそうだ。
「エルフ17」には「うる星やつら」っぽい雰囲気もあるが、当時はそういう
マンガが求められていたのかもしれない。


その意味では、彼の作品の中では最もわかりやすいマンガだと言える。
ロリ系巨乳の美少女に兵器オタク、そして銀河一の金持ちが水戸黄門のように
惑星を漫遊する、というストーリーで、今読んでも面白い。


ただ、本人は自作の解説で、自分はお姐さま系のオトナの女が好みであり、美少女を
描くのはしんどかった、と言っている。
この嗜好が、メジャーへの妨げになったのだろうか。邪推もいいとこだが。


あと、この作品が掲載されていた、白泉社の月刊コミコミが休刊してしまったことも
痛い。「エルフ17」は、無理やり話を終わらせて完結している。
もっと連載が続いていたら‥‥という思いもある。


マイナーな雑誌に描いている作品は、割と下ネタが多かったのだが、これは出版社に
要求されたものだろうか。作家本人も好きみたいだが。


これは偏見だと分かっているが、いちどエロ作品を描いたマンガ家は、少年誌に
掲載されないような気がする。
ちょうど、脱いだアイドルは、アイドルとして活動できないように。


椎名高志は、「GS美神極楽大作戦」から「絶対可憐チルドレン」までの間、よく
耐えたもんだなぁ‥‥。エロ作品のオファーはなかったのだろうか?