ひとがた流し

朝日新聞で連載されていた北村薫の小説「ひとがた流し」が完結した。
なんとなく読み始めてしまい、最後まできっちり付き合ってしまったのだが、しみじみと
した読後感だった。


40代の女性三人の友情の話、と要約すればいいのだろうか。
一人はアナウンサーで一人は作家、もう一人は写真家の妻だったかな? 記憶が曖昧だ
けど、まあそういう階層の人々の物語である。


といっても、特に華やかな世界が描かれるわけでもなく、実にフツーの日常だったり、
娘との会話だったりが淡々と書かれる。
挿絵の、おーなり由子の絵の効果でもあるのだが、朴訥とした雰囲気なのだ。


しかし、どうもキャラクターの書き分けが、あまりクッキリしてないように読めて
しまい、誰がどの名前の人だったか分からなくなり、けっこう混乱してしまう。
たぶん、毎日すこしづつ読んでいたからだろう。単行本で一気に読めば、何ごとも
なく読み進められるのかも。


ところで、女の学生時代の友情というものは、ずっと続くものなのだろうか? 
そりゃ、続くだろうけど、結婚や子育てで付き合いが中断してしまい、何となく
フェードアウトしてしまうことも多いのではないか?
どうしても、近所付き合いだったり、子供の学校関連の付き合いにシフトしていき、
中学・高校時代の友達とは疎遠になってしまうと思うのだが。


この小説でも、なぜ40代でもずっと友だち付き合いができているかを、しばらく説明
している部分があった。ということは、女で中学・高校時代の友達と40代になっても
交流があるというのは、わりと珍しいケースだと思われる。


ただ、いまは結婚しない女も増えてきているから、そういう人どうしでずっとつるんで
いる場合もあるだろうし、学生時代からの趣味で(同人誌など)切っても切れない関係に
なっている人もいるかもしれない。
いずれにせよ、長く付き合っている友だちがいるのはいいことだけど。


私は北村薫のことをてっきり女だとばかり思っていた。
というのも、小説に出てくる男性が、そろいもそろって優しい。
女にとって都合がよすぎる、というのは言いすぎかもしれないが、オッサンのひとりと
しては、中年男がきれいすぎるような気がしたので。


ところが、きょう連載が終わってネットで調べたら、オッサンの顔写真が出てきて
がっかりした。がっかりは失礼か。
それはともかく、私はこの作品しか読んでないので知らなかったのだが、本業(?)は
ミステリ小説なのですね。これまた意外だった。


この「ひとがた流し」が、小品の映画で見られたら嬉しい。