ポルノ雑誌の昭和史

ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)

ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)

自動販売機で売っているエロ本が、どのように誕生して普及して
いったかを語った内容である。
が、ゴールデン街で酒臭いオッサンの自慢話を聞かされているよ
うで、ちょっと鬱陶しい感じもした。


私が色気づいたころには、すでに自動販売機のエロ本は下火にな
っており、ビニ本ブームも手が届かないうちに終わった。


ちなみにテレビドラマ版「北の国から」で、小学生の純が母に会う
ために東京に戻ったとき、友達からビニ本を渡され、こっそりカバ
ンに入れて北海道に持ち帰るエピソードがある。
1981年の制作だから、ビニ本ブームのピークだったのだろう。


多くのエロ本業者は、ブームが過ぎるとアダルトビデオ業者になって
いったそうだ。宇宙企画とかVIPエンタープライズとかKUKIとか、
懐かしい名前だ。
アダルトビデオからは同時代なので話についていけるが、本書は
その前で終わっている。


著者の川本耕次は官能小説作家でもあるが、私は持っていない。
たぶん相性が悪かったのだろう。作品はすべて絶版になっている
そうだ。


それより、そもそもエロ本の編集者になったきっかけは、米沢嘉博
知り合ったからだそうで、「月刊OUT」を出していたみのり書房に入社
して、さべあのま内山亜紀をデビューさせているとのこと。


この流れは「レモンピープル」という雑誌でロリコンブームを迎える
わけだが、現在のコミックマーケットでの同人誌の爆発的な広がりを
この人はどう思っているのだろうか。


最後に、著者のわいせつ物の定義を書いておこう。

 警察に摘発されると、編集者は「どこが駄目なのか?」「何がイケナイ
のか?」と、担当官に必死に聞くのだが、また警察も「性器というのは
大陰唇も含む」とか「ワレメも性器」とか、いろいろと言うんだが、本当
は違うんですね。世の中に「ワイセツなモノ」なんて、実はないんです。
ホントです。性器がワイセツだというなら、そんなモノをぶら下げて歩い
ているオンナどもを全員、刑務所に送らなきゃならない。


 そうじゃなくて、あるのは「イヤラシイ視線」だけ。


 女の裸がワイセツなのではなく、女が裸であろうがなかろうが、それを
スケベな目で見る、そのスケベな目が罪なのであって、「物の見方」なんて
曖昧なモノを法律で罰するわけに行かないから、仕方ない、性器がワイセツ
だと言ってるだけなんですね。(p 130)


ここ()に著者のサイトがあって、開いたら毒々しいのでギョッとするかもしれないが、
なかなか面白かった。