笑福亭鶴瓶

明日は笑福亭鶴瓶の54歳の誕生日である。
この不思議な芸人のすごさを、私なりに振り返ってみたい。


大学生になって一人暮らしを始め、何時間でもテレビを見ることができるようになった
ので、私は深夜番組をむさぼるように求めた。
そこで「鶴瓶上岡パペポTV」という番組を見て、笑福亭鶴瓶を知った。
(だから、それ以前のアフロヘア時代の鶴瓶は知らない)


89年だったか、私は大阪の友だちのところへ遊びに行ったついでに、よみうりテレビ
公開収録されていた「パペポTV」の入場整理券を手に入れ、見に行ったことがある。
楽しみにしていた放送禁止用語が出なくて残念だったが、面白かった。


その他に見ていた番組は「ざこば・鶴瓶らくごのご」「いろもん」「平成日本のよふけ」
で、特に「らくごのご」は落語に夢中になっていた時期だったから熱心に見ていた。


鶴瓶の笑いの特徴は二つあって、ひとつは彼が<ちょっとおかしな人>の傍観者になる、
というところだ。
本当かどうかは分からないが、彼は異常なほど<おかしな人>と出会っている。
その<おかしな人>と自分との関係性を語ってゆくとき、鶴瓶は無敵になる。
(「パペポ」も、<上岡のおかしさ>を着火点にして笑いを作っている構造は同じである)


もうひとつは<即興性>へのこだわりだ。
とことん自分を追い込んでいく姿勢は「らくごのご」や「スジナシ」で一貫している。
そして、3回に1回ぐらいの割合で、見事なオチをつける構成力を披露していた。
これが最近になって古典落語に挑戦する自信になっているのだろうか? 


現在放送されている「きらきらアフロ」は「パペポTV」の、「鶴の間 TSURUNOMA」は
「らくごのご」のそれぞれ後継だろう。
54歳になる芸人が、これほど深夜番組でがんばっているのも珍しい。


最後に、鶴瓶といえば、「鶴瓶噺」(つるべばなし)だ。
漫才のように反射的に笑えるものではないが、じっくりと炙られるような語り口で、いつ
しか腹を抱えて笑うようになる。
落語では人物を演じ分けるが、鶴瓶噺では主に鶴瓶の視点で語られるのが特徴だ。
(もしかしたら、このスタイルが古典落語を演じるのに邪魔になっているのかもしれない)


ともすれば、「『師匠』と呼ばれながらも若手にいじられる大物芸人」というスタンスで
テレビに映りがちだが、本来の鶴瓶の凄さというのをアピールしておきたかった。
誰に、という当てはないのだが‥‥。


意外というべきか、鶴瓶山下達郎と仲がいいそうである。
この二人のトークだったら、万難を排してでも聴きに行きたい。