- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 文庫
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作者と私は同い年なので、1987年に大学進学のために上京する物語は
まさにピンポイントで自分に刺さるのだった。
モブキャラや主人公のその後の運命を挿入するのが秀逸で、私は
映画「アメリカン・グラフィティ」の最後を思い出した。
青春小説のきらめきと、その後の人生のほろ苦さがないまぜになって
中年以降の人は涙してしまいそうになると思う。
それにしても、一年の間にいろんなことが起こるものだ。小説なので
事件がいろいろないと面白くならないからそうしているのだろうけど、
自分とはまったく違うので情けなくなった。
主人公の自意識のあいまいさは、さまざまなことに巻き込まれていく
理由になっていて、だんだん聖人っぽい側面も見えてくる。
十分に俗っぽい青年ではあるが、読み終わるとそう感じるのだ。
今年、続編が上梓されたのをさっき知ったので、読むのが楽しみ
である。
隣の部屋の目覚まし時計を止めない人の謎も解明されるかもしれない。