前述の「風雅の虎の巻」の中で、橋本治はこう書いている。

 アイドルとは膨大なる亜流の子供達によって支えられているもの
ですが、それと同じものがマンガです。子供マンガから出て大人
マンガを達成したマンガ家がほとんどいない(例外はちばてつや
ぐらいでしょう)というところも似ています。子供マンガという
ジャンルで一家をなした作家が、その後大人向けのマンガを
完成させた例がないというのは、意外に気づかれてはいないこと
ですが、そうした意味でも、マンガというものは“子供”という
限界の中で成立するもの、大人と少年と少女との間にきっちり
境界線が引かれているような不思議な亜流ジャンルなのです。
(p231)

いや、ちばてつや以外にもジョージ秋山とか石ノ森章太郎とか
初期のビッグコミック系で描いているマンガ家はたいてい少年誌から
デビューして大人向けのマンガでもヒットを飛ばしているはずだが、
と思うのだが、橋本治がそんなことを知らないはずはなく、いったい
「大人向けのマンガを完成させ」る、というのがどういうことなのか
説明が足りない。


だいたい手塚治虫が子供マンガで一家をなし、大人向けのマンガでも
たくさん完成度の高い作品を描いていると思うのだが、いっさい言及が
ないのもよく分からない。


そのあたりは別の評論を読むしかないのだろう。