いつまでも若いと思うなよ

いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)

いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)

老いを受け入れるのは難しい、という話である。
実際、私の自意識も20代ぐらいからほとんど変わっていない。
子供でもいれば変わるのかもしれないが、そうでもないらしい。


そういう人でも、身体にガタがくれば老いを意識せざるを得ない。
橋本治の場合、最初に老いを意識したのは老眼だったそうだ。


そして還暦あたりで難病になって入院する。
不謹慎だが、このときの病院の話がすごく面白い。
妙に生き生きと描写しているのだ。



老いは人それぞれに違うかたちでやってくるので、全ての人は
老いのアマチュアである、ということが書いてあって、なるほどと
思った。


なるほどと思っても、私は入院でもして死にかけないかぎり、まだ
老いを自分のものにすることはできないだろう。
そもそも老人になることができるのかも分からない。



本書では宗教の話がまったく出てこない。
おそらく宗教は、こうした老いとか死について、うまいこと処理して
くれるのだろう。


橋本治はたぶん何の宗教も信じていないだろうから、自分で自分の
身のほどこし方を考えて、こういう本を書いたのだと思う。


そして多くの日本人も、老いや死の不安を紛らわせるほど深く何かを
信じているわけではあるまい。


そうした不安を利用して巨利を得ているのは健康食品業界だろう。
あれも一種の若返りの宗教と考えれば合点がいく。


それはともかく、老いを考えるヒントとして本書を読んでおけば、
少しは心の準備になるだろう。