- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/10/16
- メディア: 新書
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実際、私の自意識も20代ぐらいからほとんど変わっていない。
子供でもいれば変わるのかもしれないが、そうでもないらしい。
そういう人でも、身体にガタがくれば老いを意識せざるを得ない。
橋本治の場合、最初に老いを意識したのは老眼だったそうだ。
そして還暦あたりで難病になって入院する。
不謹慎だが、このときの病院の話がすごく面白い。
妙に生き生きと描写しているのだ。
↓
老いは人それぞれに違うかたちでやってくるので、全ての人は
老いのアマチュアである、ということが書いてあって、なるほどと
思った。
なるほどと思っても、私は入院でもして死にかけないかぎり、まだ
老いを自分のものにすることはできないだろう。
そもそも老人になることができるのかも分からない。
↓
本書では宗教の話がまったく出てこない。
おそらく宗教は、こうした老いとか死について、うまいこと処理して
くれるのだろう。
橋本治はたぶん何の宗教も信じていないだろうから、自分で自分の
身のほどこし方を考えて、こういう本を書いたのだと思う。
そして多くの日本人も、老いや死の不安を紛らわせるほど深く何かを
信じているわけではあるまい。
そうした不安を利用して巨利を得ているのは健康食品業界だろう。
あれも一種の若返りの宗教と考えれば合点がいく。
それはともかく、老いを考えるヒントとして本書を読んでおけば、
少しは心の準備になるだろう。