アニメは視聴者とともに成長したのか? 

昨日の続きっぽい話。
少年マンガ誌の発展はある程度詳しいけれど、日本のテレビアニメの
変遷についてはよく知らない。
いち視聴者としての記憶で書くので、間違いがあったらすいません。


国産の連続テレビアニメは手塚治虫の「鉄腕アトム」からスタートしたと
聞いている。
放送時刻はゴールデンタイムだった。
その後、テレビアニメは子供向けとして多数作られるようになり、放送
時間も夕方かゴールデンタイムがほとんどだった。【1960年〜70年代】


やがて宇宙戦艦ヤマトブームが起こり、オタクが自覚的にテレビアニメを
語り始める。
そして機動戦士ガンダムをはじめとした富野由悠季作品が、子供向けという
枠を壊していく。幼児期からテレビアニメで育った青少年たちは、これを
熱狂的に受け入れるのだった。【1970年〜80年代】

この時期、宮崎駿は「未来少年コナン」(1978年)、「ルパン三世カリオス
トロの城」(1979年)、「ルパン三世 2ndシリーズ」の2作品(1980年)を
作っている。
そこから紆余曲折を経て「風の谷のナウシカ」(1984年)が公開され、
「名探偵ホームズ」(1985年)を除き、テレビアニメからは離れている。


自分たちが作り手になったオタクたちは、オタクによるオタクのためのアニメを
作り始めた。「うる星やつら」や「超時空要塞マクロス」がその代表作だろう。
現在の深夜アニメのルーツはここにあるような気がする。【1980年〜1990年代】


90年代は私自身がアニメをあまり見ていなかったので、主観的には低迷期に
映る。起死回生の大ヒットを放ったのが「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年)
だろう。この作品で、テレビアニメの受け手は一般層にも広がった。
また、深夜アニメという枠が定着したのが1997年ごろである。おそらくVHS
ビデオからDVDへの転換が進んだのではなかろうか。【1990年〜2000年代】


2000年代以降は、ゴールデンタイムのテレビアニメはほぼなくなり、早朝の
子供向けか深夜のオタク向けの二極化になる。
私の中のテレビアニメの流れはざっとこういう感じである。


では、オタクではない大人の見るアニメはあるのか? 
フジテレビのノイタミナ枠はそれをターゲットにしている。私も全部見て
いるわけではないが、グッと来たのは「あの花」ぐらいだろうか。
あとは、面白いマンガを丁寧にアニメにしてますね、という印象だ。
なので、一般層の食いつきはあまり良くないのではなかろうか。


ここで話はマンガと重なる。
オタクが楽しむエンタメ系(大衆小説的とも言える)がメインであるのは
いいが、インテリ受けする作品(芥川賞的なもの)もあっていいのではない
か、ということだ。
ノイタミナ枠でやった「UN-GO」は、あまり成功していたとは思えないが、その心意気は買う。


もちろんテレビアニメは億単位の商売だから、確実に買ってくれるオタクを
ターゲットにするのが正しいだろう。
しかし、彼らの一部はいつまでも大きな子供のまま成長しない。
自分の望まない話を「鬱展開」と称して叩くのがその証拠だ。


大人向けの話は実写のテレビドラマで、萌え系のラノベはテレビアニメで、
という棲み分けは正しいのか、という疑問もある。
それはテレビアニメの可能性を閉ざしているのではないか。


例えば村上春樹の「ノルウェイの森」は鬱展開どころの話ではないが、
もし京アニがテレビアニメにしたら、オタクはついて来るだろうか? 
実現の可能性はゼロだが、私はそういう話をしているのである。