ロックの歴史

1960年代に創造的な頂点を迎えたロックという音楽が、2010年代に
なっても演奏されているのはなぜか、を考える本である。
あとがきに、それは鉄腕アトムなどで描かれた未来都市のような
ものではないか、とあるが、うまいこと言うなぁ、と思った。


本書では、ロックンロールの歴史を、英国の音楽史を重点に置いて
捉え直す試みをしており、読んでいると YouTube で楽曲を聴きたく
なる。


ただ、私はロックの歴史についてほとんど知らない。
おそらく、この本を読まなければロックの歴史について語れないよね、
という古典的名著があるのだろう。たぶん英語圏で。


それを踏まえなければ、本書がどういう水準で、どういう立ち位置に
あるのか、よく分からない。
大滝詠一のような人でないと、正しい評価は下せないのではなかろうか。


ポピュラー音楽史学会というのがあるのかどうか知らないけれど、
研究者が本書で出された仮説を吟味して、そのフィードバックが
また新しい本になってくれたらうれしい。



それにしても、若者の音楽として発明されたロックが、21世紀になって
当時の若者が老人になっても演奏されて観客がいる、という状況は
不思議といえば不思議である。


あるジャンルが誕生して大人気になって衰退していく、というサイクルは
たぶん普遍的な流れだと思う。


ロックもそうなっているはずなのだが、まだ需要があるのは、聴衆が
同じように年をとってお客になっているだけなのかもしれない。


音楽に何かを変える力があると信じられていた時代があって、その
息吹を嗅いだ人たちが、老人になっていく。
ということは、その老人たちが死んでしまえば、誰も聴かなくなって
しまう可能性がある。


たぶん、今の若い人たちは、音楽の力というのはあまり感じず、単に
消費しているだけのような気がする。
それともボーカロイド曲にその力を見ているのだろうか。



私が若いころによく聴いていたスティングやフィル・コリンズを、
ある時期からパタリと聴かなくなった。
自分でも何なんだろうと思うが、ポピュラー音楽というのはそういう
ものなのだろうか。


彼らのニューアルバムを楽しみに待つ、ということがなくなってしまった
のは、いわゆる洋楽に対する興味がスーッと消えてしまったからで、
英米の音楽産業が衰退したからかもしれないし、単に自分がオッサンに
なったからかもしれない。


もちろんこれは私の個人的なリスニングヒストリーなわけで、若いときから
同じジャンルの音楽を飽きずに聴き続けている人もたくさんいるだろう。
だがそれは多数派ではないような気がする。


自分でも何が言いたいのかモヤモヤして分からない。
だが、ポピュラー音楽は細分化されてちっともポピュラーではなくなって
しまったのではないか、という気がしてならない。