Boaz2013-10-13

先週の朝日新聞の「学びを語る」という欄に、東大特任教授の上昌広
という人の話が載っていた。

「最近の若者は、地元志向が強い」――。就職や進学の傾向として、
よく耳にするようになりました。この話の続きは「チャレンジ精神がない」
となり、「だから『ゆとり教育』はダメなんだ」と進みやすいです。


 僕は、このストーリーにとても違和感があります。地元を希望する人が
増えていても、それは不景気の影響だとみるべきで、若者の「縮み志向」
ではない。何より、地元志向は最近に限った傾向ではないと思うからです。
僕の研究室で研修中の慶応大3年の岡田直己さん(22)が、2013年度の大学
入試の各大学の合格者の出身地を調査し、分析しました。とても興味深い
結果が出ているのでご紹介します。


 東大は関東出身者が55%で、そのうち都内は33.6%。名古屋大は中部
出身者が76%で、そのうち愛知県は53.8%にのぼりました。この傾向は、
私立大でも変わらず、慶応大は関東出身者が78%(都内は44%)、早稲田
大は同77%(同35%)でした。


 つまり、世に言う一流大学でも、大学所在地近くの学生が集まるのです。
これは、若者が消極的になったことが原因ではなく、脈々と続く歴史的な
流れだと解釈した方がよい圧倒的な傾向です。おそらく就職も同じでしょう。


 多くの人は、身近にいる親や友達の影響を受けて進路を選択します。
身近な人が通う大学を進学先としてイメージし、親が働く姿を見て、
将来の就職先をイメージする。その結果、地元で学び、働く人が多い
のです。もっと前向きに若者をとらえるべきだと思います。


これで全文引用である。
私も、若者の地元志向は不景気のせいで、チャレンジ精神とやらが足りない
せいだとは思わない。その点は全面的に賛成だ。


が、地元の人は地元の大学に行くことが多く、就職も同じだろう、とさらっと
言っている。
この人は地方のことをどう思っているのだろうか? 


四国には有名な大学もなく、大企業もほとんどない。
社会階層を上昇しようと思ったら、大都市に出て行くしかないのである。
ずっと生活していた場所で受験するのと、慣れない場所で受験するのと
どちらが有利か考えたことがあるのだろうか? 
東京本社で面接を受けるため、高速バスで何往復もしなければならない
苦労を知っているのだろうか? 


2013年度には、早慶の「合格者」の8割近くが関東出身だそうだ。
受験者はどのくらいの割合だったのだろう? 受験テクニックに劣る
田舎者がどんどん落とされてはいないだろうか? 


首都圏から一歩も出ないまま社会人になるエリートたちが、どうして
田舎のことを考えられるだろう? 
こんなに多様性の失われた学校が長続きするとは思えないのだが。