となり町戦争

公開4週目のレイトショーで客が15人という、まずまずの入りだった。
原作の小説は読んでおらず、映画の設定しか知らないのだが、わりと面白かった。
是非にと人に薦めるような作品ではないのだが、深夜にテレビで放送されていたら何となく見て
しまう、というタイプの映画だ。
ネタバレするので隠します。




田舎の自治体どうしが戦争をするが、住民の生活にほとんど変化はなく、ただ公報に戦死者の数が
掲載されていく、というカフカ的状況を描いた物語だ。
不条理な設定なので、戦争といっても具体的にどういうことをしているのか分からない。


ただ、役所の手続きだけはものすごくリアルだ。
素直に受け止めれば、官僚主義ビューロクラシー)批判なんだろうけど、映画では住民の無関心
そのものを責めているような気がした。


あらすじは公式サイト(ここ)を読んでいただくとして、気になる部分を書いておきたい。
小説では主人公たちの年齢がいくつに設定されているのか分からないが、映画での江口洋介
原田知世が実年齢と同じだとすると、ふたりとも40前のオッサンとオバサンである。


たとえば、岡田義徳とか安藤政信と、須藤理彩とか京野ことみあたりの組み合わせだと10歳ぐらい
若返る。
ふたりとも未婚で、そこそこ仕事も任されるという設定だと、30歳すぎぐらいの方がいいんじゃな
いかと思った。


というのも、映画の中で江口洋介原田知世偽装結婚して同居することになるのだが、ラブシー
ンが、それなんてエロゲー? と突っ込みたくなるぐらいぎこちないのだ。
ふたりとも実年齢より若く見えるし、特に原田知世は地味な公務員という役をうまく演じていて良
かったけど、もう少し若い女優の方が萌えるんじゃないかなぁ、と。


うまく演じていたといえば、主人公の上司役の岩松了がよかった。
彼はふだんはただのサラリーマンだが、戦時には傭兵としてとなり町に雇われてナイフで何人も殺
しており、江口洋介もあわやという場面がある。
その、普通の部分と狂気の部分がちゃんと地つづきになっている感じが怖かった。


ただ、一人だけ、戦争ウォチャー役の男は違和感があった。あれは誰が演じていたんだろう? 生
理的嫌悪感を催す顔だった。
おそらく監督は、ネット上の匿名のヤジウマを代表するものとして登場させたと思う。
彼が登場する場面だけが全体から浮いていた。


東温市(旧重信町)で撮影されたと聞いていたけど、多くは大洲市だった。
最後に伊予鉄横河原線石手川公園駅で、江口洋介原田知世が寄り添う場面がある。
公式サイトを見ると、実際に運行している電車で撮影されたとあって、たまたま乗り合わせた人は
ラッキーだったろうな。


我々は交通事故の死者の数を、単なる数字としか受けとめてないけれど、実際に知っている人が亡
くなった場合は全く感覚が異なるだろう。
外国の戦争の死者についても同様だが、そういう平和な日常の鈍感さを突いた佳作だったと思う。


本文と写真はまったく関係ありません

伊予鉄三津浜