華麗なる一族

華麗なる一族 [DVD]

華麗なる一族 [DVD]

原作の小説を読み、テレビドラマを毎週欠かさず見て、なおかつ昔の映画をチェックして、
我ながら何でここまで「華麗なる一族」にのめり込むのか不思議だ。
物語はつまらないと思っているのに。


映画は1974年に公開されており、小説のイメージとほぼ同じ役者がキャスティングされている。
ただ、万俵鉄平役の仲代達矢と、綿貫専務役の西村晃だけは違和感があった。


仲代達矢はうまいのだが、どうも暗くて老けて見える。当時42歳ぐらいで、原作の設定より3つぐらい
年上なのだが、妙に貫禄がある。加山雄三ぐらい明るい方が、大金持ちの息子っぽくてよかったと思う。
おそらく、最後に猟銃で自殺する役のために、あえてメランコリックな表情をした仲代にしたのかもし
れないが。


また、綿貫専務は原作では赤ら顔の太った男だが、映画では小柄で上品そうな西村晃になっている。
ちゃんと下品に見える演技はしているのだが、どうしても野卑なイメージはない。
たたき上げの銀行員という感じはしなかった。
その点、いまのテレビドラマで綿貫専務を演じている笑福亭鶴瓶はジャストフィットである。


三時間半ある映画だが、長大な原作の要点を余すところなく映像化しており、切るべき部分はバッサリ
切っているから、意外と短く感じられる。
このあたりは脚本を書いた人の手腕だろう。
むしろ、原作の小説を読んでいないと、後半がたたみかけるような展開なので分かりづらいかもしれない。


なお、現在のテレビドラマで万俵大介を演じている北大路欣也は、映画では一之瀬四々彦役である。
あまりに若いので最初は分からなかったが、劇画みたいな目もとは今と同じだった。
スケジュールが合わなかったのか、映画では米国に留学しており、物語の途中で帰国している。
その際、万俵二子とエアメールで文通をしているエピソードがあって、脚色がうまいと思った。


テレビドラマでいろいろ物議を醸した先代の肖像画だが、映画版でもちゃんと出てくる。
ただし、映画では先代の役も仲代達矢が演じており、そっくりな肖像画もそう不自然ではないが、
やはり笑ってしまう。
それから、当時の技術的制約もあったのだろうが、将軍と呼ばれる鯉や、山で仕留める猪は一切
出てこない。さすがである。


監督の山本薩夫は「白い巨塔」の映画もそうだが、がっしりした大作が本当に上手い。
Wikipedia によると、共産党員だったそうで、原作にはない阪神特殊製鋼の労働争議をリアルに
描いていた。


当たり前だが、映画版に登場する人の顔は昭和40年代の顔をしており、政治家も官僚も銀行員も
労働者も、みな戦争を体験した重みがあった。
平成に作られたテレビドラマが妙に軽く見えてしまうのは、役者の演技力というよりも、生まれ
ついての豊かさにあるのではないか、と思った。みんな若く見えるし。


そうだ、先週のドラマでは万俵鉄平が海に落ちた沖仲仕を助けだし、その心意気に打たれた沖仲
仕の大将が大勢の仲間を連れて万俵鉄平を助けるところで終わっていたが、こんな内容は原作に
も映画にも一切なかったぞ。


もし、木村拓哉がそういうストーリーを提案したのだとしたら、自分の首を絞めていると思う。
それから、稲森いずみと会う場面で必ず“デスペラード”が流れるのも安っぽい気がするが、あ
れも本人の希望なのだろうか。
このまま田村正和みたいになっていくのもいいかもしれないけどさ。


本文と写真はまったく関係ありません

从釻v釻)<意外とお金より愛を選ぶ女よ、アタシは