NHKのBSで再放送されていた朝ドラ「はね駒」を見終えた。

当時の斉藤由貴のファンだったので、浪人しているときに

見ていたはずなのだが、この年になって見返すとほとんど

憶えていなかったことに気づいた。

そもそも夫役が渡辺謙ということさえ失念していたのだから、

何を見ていたのやら。

 

まだ男女共同参画社会という言葉が出てくる以前の1986年の

作品ながら、女性の進学や就職について先進的な生き方を

した人物をモデルにしている。

あまりに進歩的すぎる部分は、母親役の樹木希林がビシッと

抑えつけていて、脚本の目配りもよい。

その樹木希林沢田研二が共演するキャスティングも憎い。

 

おしん」もそうだったが、妹が嫁いだ先の農村で嫁いびりが

あって不幸な目に遭う話があって、当時は農家の非近代性が

怨嗟の的になっていたのだろう。

 

三陸地震の描写は、東日本大震災を予見するようなところが

あって驚いた。名作はそういうところがあるのかもしれない。

 

子役の演技は今の水準からするととても低いのも気になった。

というか、いまの子役が上手すぎるのだろう。

普通の子供が受けていたオーディションに、劇団の子供が

やってくるようになったのは90年代あたりからなのか。

 

ドラマの内容はわりとコメディタッチなところが多かったのに、

タイトル音楽が不思議なほど重厚だったのも謎だ。

 

*[本]レディ・ジョーカー

レディ・ジョーカー 上 (新潮文庫)

レディ・ジョーカー 上 (新潮文庫)

  • 作者:薫, 高村
  • 発売日: 2010/03/29
  • メディア: 文庫
組織にがんじがらめになっている人、競馬が好きな人が読むと
夢中になれるのではなかろうか。
私はどちらでもないから、最初からお客さんではなかったのだな。


だから、ずっとおっさんの愚痴を聞かされているような感じがして
ページをめくるのがきつかった。
大企業の社長や新聞記者や刑事のディティールがすごくて、みなさん
こんなに忙しくて寝る暇があるのですか、と心配になった。


ただ、暇つぶしに「チボー家の人々」を読むような刑事がいるもの
だろうか、と疑問に思った。合田刑事はキャリアではないはずだが、
趣味はバイオリンだったり、なぜかハイカルチャーを身に着けている。


一方、「合田」の対位法として「半田」と名付けられた刑事は、仕事を
サボって競馬やパチンコをするキャラクターである。
彼が犯罪者の一味となって、最終的に合田と対決するのが終盤の山場だ。


おっさんの愚痴ばかり、と言ったのは、意図的に女性の内面がほとんど
語られていないからだ。
その象徴として知的障害者の「レディ」が描かれている。
大企業や警察・検察に対して、女性はレディのように排除されている
ことを伝えたかったのかもしれない。


いや、それは深読みのしすぎで、単にこの作品のベースがBL小説だから
かもしれない。
終章での合田と加納の関係を読んで、これそういう話だったの、と
驚いた。やはり私はお客さんではなかったのである。


最後まで読んでも、結局あのお金はどうなったのか、レディの父親は
どこに行ったのか、根来の死体は出てきたのか、などなど、分からない
まま終わったことが多くて消化不良だった。


全部書いてしまうと余韻がなくなるからだろうけど、もやもやした
読後感は否めない。


なぜか、これを読むと妙にキリンラガービールを飲みたくなったので
買ってきたのだった。

*[映画]はたらく細胞

アニメ「はたらく細胞」劇場版を見に行った。
観客は私を含めて3人。
座席は半分にガムテープで☓印がつけられ座れ
なかった。


映画は乳酸菌を巡る旅、という感じで、いっそ
ヨーグルトのメーカーと提携したらどうか、という
内容だった。
学習まんがっぽい話なので、ダレる場面もあった。


TV版の主役だった赤血球が乳酸菌を運ぶのは医学的に
正しくないのだろうか、ほとんど出番がなく、普通の
細胞がメインだった。
この役を演じた小林裕介はよかったけれども、テレビ
シリーズを見ていた人は物足りなかったのかも。


盛り上がる場面はがん細胞とのバトルで、早見沙織
演じる制御性T細胞がよかった。


来年1月からテレビ放送される話の先行上映だそうだが、
何話かに分割されてオンエアされるのだろうか。
それともテンポを重視してカットされるのかもしれない。


映画館に行ったのは2月以来だと思うが、映画泥棒が
アクション俳優のようになって格好良かった。
いつからあのバージョンになったのだろう。

TBSのドラマ「MIU404」を見終えた。

いや、面白かった。

序盤から中盤、いろんな事件があったけれども、終盤の

菅田将暉がすべて持って行ってしまった感がある。

 

この菅田将暉が演じた犯罪者は何だったのか、というのを

考えてしまう。

私は、2020年における悪をキャラクター化したものでは

ないかと思う。

 

本名や経歴が不明で、ただ悪意だけがあり、他責的で

揚げ足を取って、人を見下している。

ネットの悪いところを煮詰めたような人物だ。

 

こういうキャラクターを見事に演じた菅田将暉はすごいな、と

感心する。

もしかしたら、しばらくはこのタイプの悪役がドラマで

頻出するかもしれない。

 

彼に踊らされてSNSで反応する我々、という視点も忘れては

ならんのだろうな、と思う。

 

あと、メロンパン号は最終回に大破すると予想していたが

そうはならなかった。ちょっと残念。

 

 

 こないだ単行本が出たのだが、ちょっと設定が面白い

ファンタジーで展開が楽しみだ。

主役は長命種族のエルフで、魔王を倒した後から物語は

始まる。

なんというか、喪失を知っていく話で、一人だけ長生き

するのも良いことなのか悪いことなのか、いろいろ考え

させられる。

 

いまは弟子の魔法使いと珍道中みたいなことになっているが、

これからシリアスな方に行くのかそうでもないのか、ちょっと

分からない。でも期待できる。

 

*[映画]三度目の殺人

たまっていた録画から、ようやく見た。
裁判官の正しさを担保するものは何か? という問いがテーマで、
役所広司がキリストのような、神様っぽい人ではなかったか、という
ぼんやりした答を残して終わる。


実際、法学ではどう考えられているのだろうか。
裁判官は裁判官だから正しい、というトートロジーしかなさそうだ。
むしろ近代以前の宗教が権威だったときの方が話はすっきりしそう。


いい映画だったけど、あまりしっくりこない余韻が残ってしまった。
テーマが強すぎたのかもしれない。


ところでみなさんは福山雅治はどうですか? 
どうと言われても困るだろうけど、この人は俳優としてもなかなかの
キャリアで、「ガリレオ」という大ヒットドラマを主演しているし、
大河ドラマ坂本龍馬を演じてもいる。


じゃあ、平成を代表する俳優のひとりか、と言われると、なんか
名前をパッと挙げにくいというか何というか。
決して下手な人ではないのだが、ミュージシャンが俳優をしてる
感じが抜けないのです。


思うに、彼の特徴的な声が良くも悪くも印象に残ってしまうから
ではないか。
どんな役を演じても、声が最後に残ってしまうというか。
すごく不思議な俳優である。