ハクソー・リッジ

ツイッターで「プライベート・ライアン」を超える戦闘描写だという書き込みを
読んで興味を持ち、沖縄戦だということ以外まったく知らないまま見た。


ハクソー・リッジ」は、キリスト教セブンデー・アドベンチスト教会を信仰する
青年が第2次大戦の沖縄戦に衛生兵として従軍し、多くの負傷兵を救った実話をもと
にした映画である。


セブンデー・アドベンチスト教会の信仰では、信者は武器を持ってはならない、と
されている。なので本来は軍隊に志願するのはありえないのだが、主人公の青年は
自分だけが安全地帯にいてはいけないと合衆国陸軍に入隊する。


様々な軋轢があり、一時は軍法会議にまでかけられるのだが、本人は自分の信仰心を
守り抜き、ついに衛生兵として沖縄のハクソー・リッジ(前田高地)の戦いに挑む。
ここで彼は武器を持たないまま、超人的な働きで戦場に残された負傷兵を救出する。


この功績により、良心的兵役拒否者として始めて名誉勲章を受章する。
エンドロールでは、2006年に亡くなった本人の映像も流れる。



映画は、戦争映画としてはかなりオーソドックスなものだと思う。
沖縄戦の描写はなるほど過酷なものだが、「プライベート・ライアン」を超えた
というのはオーバーだろう。
とはいえ、あの戦場で生き残った人がいたのが信じられない。



ネットのレビューを見ると、信仰心を守り抜いた男の物語という感じになっているが、
私は日本国憲法第九条を思い浮かべた。
武器を持たずして戦争にコミットし平和を守りたい、という主人公の行動が、
まさに憲法第九条そのものではないだろうか。


個人的には、敵が攻めてきたら武器を取るのは当たり前だと思うので、憲法九条を
堅持すべきだとは思わない。自衛隊を国外に派兵するのを禁止して軍隊として認める
のが現実的だろうと思う。


なので、「ハクソー・リッジ」で描かれているように、憲法九条を守るのは一種の
信仰である。その信仰心を守り抜くためには、この映画の主人公のように辛苦を
味わわなければならないだろう。
そのような覚悟はあるのか、と問うている作品だと思う。



できれば政治的な思惑をなくして鑑賞してほしい作品だが、むしろこの映画を
どのように位置づけるかで、見た人の立場が明らかになるのかもしれない。


硫黄島の戦いにしろ、沖縄の戦いにしろ、過酷な陸戦を描くのはいつも米国映画で
ある。日本では資本力がないので無理なのだろう。
なんとも残念なことである。