里山資本主義

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

NHK広島が製作した番組で、中国地方でしか放送してなかった内容を
もっと広く伝えようと書いたものだという。
なので、ほとんどはNHK広島のディレクター二人が書いていて、藻谷浩介は
中間総括と最終総括だけである。


NHK広島の人たちは、わりと夢見がちな話をしていて、そこを藻谷浩介が
ビシッと締めている、という印象だ。
特に最終総括の「日本経済ダメダメ論の誤り」は論理的で腑に落ちる内容
だったので、そこだけでも読んでほしい。



里山資本主義とは、マネー資本主義に対するアンチテーゼである。
しかし単に、便利さを捨てて昔に戻れ、という無茶な主張をしているわけ
ではない。


便利さは便利さとして利用しつつ、オルタナティブな回路を作っておく方が、
万が一のときに安心だよ、という話である。


NHK広島の人たちは、林業を見直すことで、エネルギー問題を補助する方法を
提案しており、たしかにうまくいけば面白いな、と思う。


ただ、山奥で暮らしている人はともかく、松山のような中途半端な都市で
生活している人間には、マネー資本主義には手が届かないし、里山資本主義
にもなれない。
ちょっと裏山に行って薪を拾ってくる、という生活はできないのである。



それでも、なるべく地元産の野菜や肉を買うようにはしているし、近所に
出かけるときはクルマに乗らないで自転車にする。
そういう小さい心がけでもいいのだ、と本書で言っている。


短期間で何かが変わることはないけれど、次の世代ぐらいまでには、なんとか
マネー資本主義のマッチョな体質をやんわりと退けられるような、足腰の強い
社会にしたいものである。