M-1グランプリ2010雑感

M-1の最後の優勝者は笑い飯だった。
妥当なジャッジだったと思う。


ただ、本来ならば笑い飯は2003年の奈良県立歴史博物館のネタのときに
優勝するべきだった。ここまで引っ張りすぎた感がある。


もうひとつ、ここ数年、敗者復活のコンビが決勝に残っているのだが、
じゃあそれまでの審査は何だったのか、と思う。
サンドイッチマンは敗者復活から優勝したわけだが、どういう理由で
ファイナリストに選ばれなかったのか、審査員に聞いてみたい。


10年を目処にM-1は終了するわけだが、今後はどうなるのだろう。
漫才をしっかりと見せるネタ番組はほとんどないわけで、若手もベテ
ランも劇場で本気を出すしかないのかもしれない。


番組を制作している吉本興業側も、優勝したコンビよりも他の事務所の
オードリーが売れたりするのは面白くなかろう。
チュートリアルブラックマヨネーズが優勝したあたりが、賞としても
ピークだったのではなかろうか。


さらに、審査員にさまぁーず大竹や雨上がり宮迫が入ったのは冒険だった
と思う。
若手の芸人とベテランの芸人の断絶が、審査員の人選に現れているような
気がする。
(断絶させたのはダウンタウンなのだが)


結局、漫才の構造をダウンタウンが変えてしまった後、誰も新しい構造を
構築できていない現状があるわけで、このM-1から出てきた芸人がいまひと
つパッとしない理由もそこにある。


例えば「テンションが上がる」という言い方は、いまや普通の日本語と
して使われているが、ダウンタウン以前はなかったものである。
(英語でテンションは張力のことで、そのまま使っても意味は通らない)


このように、新しいワーディングを生み出すぐらいの芸人を排出できな
かったところにM-1の限界があったのではなかろうか。


ただ、見ている人をギョッとさせるような異質な芸人が世間に出てくる
きっかけとなったことは評価したい。
南海キャンディーズやオードリーは、この番組なしではメジャーになら
なかっただろう。
今年登場したスリムクラブも同じ系列に属するはずだ。


私は、ジャルジャルが漫才の構造をメタ的に考察したネタを披露したこ
とに希望を持ちたい。
こういう前衛から、ポストダウンタウンが生まれるのではないか、と期
待する。