入試問題の記憶

私は高校入試でどんな問題が出たのかを憶えていない。
同僚は憶えているという。


もう20年以上前のことだから、忘れて当然かと思っていたが、世間の人は
どうなんだろうか。
普通は、大事な入試問題を後になってもずっと記憶しているものなのか。


高校入試はおろか、大学入試の問題もほとんど憶えていないので、他人も
そんなもんだろうと思っていたが、どうやら違うみたいだ。


ひねくれた考え方をするなら、同僚の人生のピークは高校に合格したとき
で、そのときの前後の記憶は何度も反芻されているだろうから、現在でも
ありありと思い出せるのかもしれない。


一方、別に人生の通過点にすぎなかった人にとっては、入試問題なんてい
ちいち憶えている意味もないので、すっかり忘れているのではないかと。


私は、自分が合格した大学の問題ではなく、別の大学の社会の問題を、な
ぜか一問だけ憶えている。
ポーランド出身の作曲家で「仔犬のワルツ」などを作曲した人物は誰か、
という問題で、ショパンが正解だった。
けっこう自信があったのだけれど、その大学は落ちた。


それほど行きたい大学でもなかったので、どうして憶えていられたのか不
思議だ。その問題が出たことを、親か誰かに話したせいかもしれない。


ちなみに同僚は高校入試のときの受験番号も憶えているそうだ。
私は忘れている。
どちらが幸せなんだろうか。