中小企業の社長はなぜ説教が好きか? 

私はいくつもの中小企業を転々としてきた。
そして、何人もの社長を観察することができたが、揃いも揃って説教好きだった。


今日も、社長に「塾にとって大切なのは人間理解である」という、わけのわからん
話をさんざん喋られ、これも給料のうちだ、と我慢して聞いた。


それにしても、中小企業の社長は、どうしてこれほどまで説教が好きなのだろう
か? 


私が思うに、彼らは悪意をもって下の者に話をしているわけではない。
むしろ、親切心から自分のノウハウを分けてやるつもりで説教をしているような
気がする。大きなお世話だが。


他人が自分の話をおとなしく聞いてくれる、というのは快感だろう。
しかも、部下の人間だから、論理的な矛盾があったとしても反論はしない。
ランナーズ・ハイならぬ、トーキング・ハイ状態が訪れ、至福のひとときが訪れ
ているのかもしれぬ。


つまり、中小企業の社長は、自分のちょっとした成功に酔っているために、次の
ステップを忘れて説教をしているのだ。


もっとも、どんなことも自分の糧として吸収できる立派な人もいるだろう。
師弟関係は、弟子が師匠を決めるところから始まるらしいから、教わる姿勢のあ
る人にとっては、下らない説教も何らかの意味があると言える。


私は自分よりも知識のない人をバカにする悪い癖があって、相手の話に納得のい
かないところがあれば心の中で毒づき、場合によっては正直に言う。
それで人間関係をこじらせることもあった。


私が出会った中小企業の社長で、心から尊敬できる人は不幸にして一人もいなか
ったけれど、起業して社員を雇えるようになるだけでもすごいことである。
多少、我の強い人間でないと成功できないかもしれない。


ただし、我の強いままでは中小企業から脱皮はできまい。
下の人間に説教をしている暇があったら、本の一冊でも読んだらいいのに、と思
うのは余計なお世話か。
私は社長の話を聞くぐらいなら、本を読んでいた方がいいのだけれど。