20年鍋

このあいだ気がついたのだが、私が持っている鍋は20年ものである。
ちょうど自炊を始めてからそのぐらい経つわけだ。
主にカレーやシチューを煮るために使っており、今も立派な現役である。


そういえば、中華鍋も10周年を迎えたはずだ。
吉祥寺のロヂャースで1000円ぐらいで買ったのだが、これも長持ちしている。


カレー用の鍋は、たぶんなんということはない普通の鍋で、上京するときに親が買って
くれたものだ。
使用頻度を考えると、月に1度ぐらいだと思うので240回ぐらいか。
鍋の耐用年数がどのくらいか分からないが、今のところ穴が開いたりする気配は全く
ない。


私は料理のレパートリーが少ないので、このカレー用の鍋と、スパゲティを茹でるとき
の大きな鍋、それからおでんなどを煮込むときの広い鍋、味噌汁を作るときの小さな鍋
の4つぐらいで自炊してきた。あと中華鍋か。


普通の主婦は、何種類ぐらいの鍋を使っているのだろうか。
台所がすごく広いセレブ主婦はともかく、収納に限りがある場合は、鍋も最小限にしな
ければなるまい。


うちの母親は異常に鍋を買う人で、なぜかというとしょっちゅう焦がしてダメにしてし
まうからである。
私はカレー用の鍋を一度だけ焦がしたことがあるが、それ以外はない。
料理の最中に別のところへ行かないからだ。


母親は、再起不能になった鍋たちを捨てればいいのに、なぜか残骸を台所に置いておく
ものだから、尋常ではない数の鍋が散乱している。
たぶん20年続けて使った鍋など一つも持っていないだろう。


ふと思ったのだが、自炊していた男が結婚するとき、鍋とかはどうするのだろうか? 
そのまま新しい家庭に持ち込むのか、それとも捨ててしまうのか。


私は結婚する可能性がないので、そんなことを考えたこともなかったが、たいていの人
は捨ててしまうような気がする。
というか、自炊をこまめにするような男は、別に結婚する必要もないのだ。


むしろインスタントラーメンを10年ぐらい作り続けたような小さな鍋しか持っていない
男が、その鍋を何の感慨もなく捨てて、ちゃっかり結婚するのだろう。
私には20年連れ添った鍋を捨てるなんてことは、とてもじゃないができない。