- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: コミック
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どういういきさつで、ヤングアニマルに連載が決まったかは知らないが、「ハチミツと
クローバー」で大ヒットをとばした作者が、二作目の連載で選ぶ雑誌としてはマイナー
である。
普通はスピリッツとかモーニングだろう。
(作者が週刊連載を拒否したのかもしれない)
それはともかく、相変わらず面白かった。
棋士が主人公のマンガである。
将棋のマンガは、アフタヌーンで連載している「しおんの王」や、ヤングジャンプで連載
している「ハチワンダイバー」があり、将棋そのものを描いた作品としては「ハチワンダ
イバー」の方が圧倒的に面白い。
しかし、「3月のライオン」は将棋そのものというよりも、主人公の少年が(おそらく)誰
かを愛するようになるまでの物語になるはずである。
その設定が、心憎いほど上手い。
東京の下町が舞台になっており、作者が育った地域を反映していると思われる。
このテイストは、宮部みゆきの小説に通じるものがあり、下町の人の生活や考え方が細や
かに描写されているところが似ている。
羽海野チカのマンガで、メガネは本音を隠す記号、タバコは大人の記号である。
なので、主人公の少年はメガネをかけているがタバコは吸わない。未成年だから当たり前
だが。
なので、主人公が本当に心を許している人の前か、無意識のときにしかメガネは外さない。
まあ、これはマンガの共通文法みたいなものだけれども。
そして、主人公と親しくなる下町の美人姉妹は、反対にとてもオープンな性格である。
気弱な少年をやさしくいたわってくれる、ギャルゲー的な世界でもあるが、美人姉妹も親
を失っているらしく、ときおり見せる翳りが話の奥行きを作っている。
あと、物語と関係ない部分で、ネコの描き方が素晴らしく、ネコ好きな人は楽しめること
間違いなしである。
私もあんなふうにネコを飼いたかった。
次の単行本も楽しみである。
二海堂くんが死ぬんじゃないかと、ドキドキしている。