3月のライオン

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)

羽海野チカのマンガを読むのは久しぶりだ。
どういういきさつで、ヤングアニマルに連載が決まったかは知らないが、「ハチミツと
クローバー」で大ヒットをとばした作者が、二作目の連載で選ぶ雑誌としてはマイナー
である。
普通はスピリッツとかモーニングだろう。
(作者が週刊連載を拒否したのかもしれない)


それはともかく、相変わらず面白かった。
棋士が主人公のマンガである。
将棋のマンガは、アフタヌーンで連載している「しおんの王」や、ヤングジャンプで連載
している「ハチワンダイバー」があり、将棋そのものを描いた作品としては「ハチワン
イバー」の方が圧倒的に面白い。


しかし、「3月のライオン」は将棋そのものというよりも、主人公の少年が(おそらく)誰
かを愛するようになるまでの物語になるはずである。
その設定が、心憎いほど上手い。


東京の下町が舞台になっており、作者が育った地域を反映していると思われる。
このテイストは、宮部みゆきの小説に通じるものがあり、下町の人の生活や考え方が細や
かに描写されているところが似ている。


羽海野チカのマンガで、メガネは本音を隠す記号、タバコは大人の記号である。
なので、主人公の少年はメガネをかけているがタバコは吸わない。未成年だから当たり前
だが。


なので、主人公が本当に心を許している人の前か、無意識のときにしかメガネは外さない。
まあ、これはマンガの共通文法みたいなものだけれども。


そして、主人公と親しくなる下町の美人姉妹は、反対にとてもオープンな性格である。
気弱な少年をやさしくいたわってくれる、ギャルゲー的な世界でもあるが、美人姉妹も親
を失っているらしく、ときおり見せる翳りが話の奥行きを作っている。


あと、物語と関係ない部分で、ネコの描き方が素晴らしく、ネコ好きな人は楽しめること
間違いなしである。
私もあんなふうにネコを飼いたかった。


次の単行本も楽しみである。
二海堂くんが死ぬんじゃないかと、ドキドキしている。