*[本]思いつきで世界は進む

思いつきで世界は進む (ちくま新書)

思いつきで世界は進む (ちくま新書)

この本に「人が死ぬこと」というエッセイがあって、西城秀樹が亡くなった
ことを書いている。その中に

 多分、人はどこかで自分が生きている時代と一体化している。だから、
昭和の終わり頃に、実に多くの著名人が死んで行ったことを思い出す。
(p71)

とある。
まさかその数カ月後に自分が死んでしまうとは、まさに時代と一体化した
人であったなぁ、としみじみ思う。


電子書籍では可能かもしれないが、できれば発表された順番の時系列で
読んでみたかった。



革命によって打ち上げられた近代は、第一宇宙速度で地球を周回すると
思われていた。
だが、それはただ放物線を描いているだけだったのだ。
ずっと軌道を回っていると信じていたものが、いまやだんだんと落ちて
いるのが分かる。


なぜ近代は失速してしまったのか? 
それは一度打ち上げてしまえばずっとその速度を保てると誤解して
いたからだ。
自由や平等を守るためには、みんなが少しづつ賢くならなければ
ならなかった。
賢くなるためには勉強しなければならない。


その勉強を続けるモチベーションは、人の根源的な欲望によって
壊されてしまった。
根源的な欲望をむき出しにしても恥じない人を、ヤンキーと呼ぶ。
(これは米国人という意味でもあるし、日本的不良という意味でもある)


放物線を描いて落下する近代を、もう一度立ち直らせることは
できるのだろうか? 
橋本治の苦い諦めが本書からは読み取れる。