- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: 新書
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分からないことになっている。
インテリはみんな意地悪だ、というのはそのとおりなのだろう。
↓
本書で面白かったのは「悪を考える」という章だった。
橋本治は「スターウォーズ」のダース・ベイダーを見たとき、
「これが普通の人間の顔をしていたら『スターウォーズ』はちんけな
ものになっちゃうな」と思い、
「そうか、もうこういう“巨大な悪”を人間が表現出来ない時代に
なってたんだな」
と考えたそうだ。
そこからハリウッド映画の悪役がどう変わっていったか、という
話になり
今や、正義のヒーローを大活躍させる悪役の居場所がない。あんまり
そうは思われていないかもしれないが、正義のヒーローは、大金持ちか
大組織に属するエージェントだったりする。(中略)だから、いつの間にか
悪役というものは「ヒーローの属する正義の組織の上司」という日常的な
ものになってしまった。
と結論づける。
↓
これは日本の深夜アニメでも当てはまるような気がする。
「魔法少女まどか☆マギカ」の悪役はキュウベエで、これはヒロインの
マスコットみたいな外見だけど、上司といえば上司だ。
「ガールズ&パンツァー」の悪役は文科省の役人だが、これもまあ
上司というか学園艦を取り仕切る組織の偉い人である。
いささかこじつけめいているが、絶対的な悪というよりは、組織の
歯車みたいな立場のキャラクターが悪役になっていることは否めない。
だから何なのだと言われても困るのだが、悪役をぶっ殺せばみんなが
スッとするような単純明快な物語というのは、21世紀にはなかなか成立
しないのだろうな、ということだ。
だがしかし、物語で失われた勧善懲悪は、実際の政治に利用されては
いませんか、ということも申し添えておこう。