Boaz2015-06-28

東京に住んでいるとき、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンのCMを
ずいぶん見た。
ググると現在でもやっているそうだ。


東海道新幹線で京都に来ませんか、という広告なので、主に首都圏の人をターゲット
にしていると思われる。
そして、20年以上続いているということは、企業にとっても消費者にとっても好評だ
ということだろう。
広告としては珍しいロングランだと思う。



さて、東海道新幹線は東京と大阪を結んでいる。
東京駅を起点とすれば、終点は新大阪駅である。


JR東海は、なぜ「そうだ 大阪、行こう。」としなかったのだろうか? 


私が思うに、東京からの視点では、大阪より京都の方が格上だからだ。
そして、この視点に対するルサンチマンが、やしきたかじん的な、橋下徹的なものを
生み出し続けている。



言うまでもなく、大阪も京都も歴史のある大都市である。
だが、なぜか東京の人間は大阪を格下に扱い、京都には敬意を払う。
(京都に対しては敬して遠ざける、と言った方が正確かもしれない)


その理由を考えてみるに、天皇が住んでいたかどうか、という違いがあるのではないか。
本当は京都も格下に扱いたいのだが、皇室の歴史を持ちだされると、東京の人はウッと
詰まってしまうような気がする。


歴史に付随する、寺社仏閣の観光資源の豊富さというのも理由に挙げられるかもしれない。
あくまでも東京からのイメージだが、京都は寺社仏閣が多いが、大阪は少ない。
むしろ大阪のお寺や神社は、観光地ではなく地元の人が普通に参拝するものとして存在して
いるから地域に溶けこんでいて、旅行スポットとしてアピールしづらいのかもしれない。


さらに、芸人の存在が大阪の人に偏見を抱かせている。
本当は関西圏の芸人の出身地は様々なのに、大阪の人=お笑い芸人というイメージが
固着している。
黒人=スポーツがうまい・歌がうまい、みたいな偏見と同じように。



最終的にとどめを刺したのは、バブル期以降、経済的な主導権を首都圏に握られて
しまったことだろう。
大阪の人の自信は、ここで大きく砕かれたのではないか。


主観的にはライバルだと思っていた東京に負けてしまい、地方都市のひとつとして
数えられてしまう屈辱は、大阪の人の心に大きな傷を残しただろう。


中小企業の多い大阪では、不景気で辛酸を嘗めた人も多かったし、グローバル化
という掛け声にも生理的な反感を抱いたと思う。


このドロドロしたマグマのような怨念が、一気に噴出したのが橋下徹現象なのでは
ないか。
そして、こうした怨念がある限り、第二・第三の橋下徹が現れるはずである。



この恨みつらみを鎮めるには、大阪の人にもう一度自信を取り戻してもらうしか
ない。


そこでヒントになるのは、京都の人々である。


京都も(正確には京都市)地方都市の一つに過ぎず、経済的にも東京とは比べる
べくもない。
が、京都の人の心は折れない。
一体、何を心の支えにしているのだろう? 


個人的には、根拠の無いプライドではないかと思う。
東京には一度として負けたことはないし、これからも負けないと頑なに思い続けて
いるから、大阪のような怨念が溜まらないのではないか。


もっとも、大阪が京都市のような排他的な人ばかりになったら、良いところが
失われてしまうような気もする。


やはり東京の人が、もっと地方のことを知って偏見をなくすべきだと思うのだが、
メディアを通した情報が多いので難しそうだ。


実際に自分の目で見るのが一番で、「そうだ 京都、行こう。」もそう考えると
良いコピーである。京都以外もどんどん訪れてほしい。