黒澤明という時代

黒澤明という時代 (文春文庫)

黒澤明という時代 (文春文庫)

いまの若い人は黒澤明の映画をどのくらい見ているのだろう? 
もし代表作を見ていなければ、ぜひ見ることをお勧めする。
その最適なガイドブックとなるのが本書である。


私は20代からずっと小林信彦の映画評を信じている。

ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200 (文春文庫)

ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200 (文春文庫)

「ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200」は実にバランスのいい
映画ガイドだと思うが、この文庫本は今もあるのだろうか。


あまりにも偉大なイメージがついた人は、どうもとっつきにくい
印象があって、「巨匠」とか「帝王」とか呼ばれると、ケッと
思う若者もいるだろう。


が、黒澤明の初期から中期は、実に面白く明快な映画が多い。
モノクロでセリフが聞き取りづらいものもあるが、難解な作品は
ほとんどないといっていい。


私は、勝手な印象だが、黒澤明マイルス・デイビスと同じような
キャリアをたどっているのではないか、と思うことがある。


マイルスの4ビート時代が黒澤のモノクロ映画時代にあたり、
電化時代がカラー映画に対応していると考えるがどうだろうか。


そしてマイルスの4ビート時代には二度の黄金期があったように、
黒澤のモノクロ映画時代も「七人の侍」と「天国と地獄」前後に
黄金期があったと言えるのではないか。


で、マイルスが電子楽器を導入してからと黒澤がカラーフイルムを
導入してからの時期がダブって見えてくる。
なんだか首をひねるような作品が発表され、でも偉い人なんだから
あんまり批判できない、みたいな雰囲気になったような気がする。


(もっとも、これは私の能力が低いからそう思うだけであって、後期の
作品の方が素晴らしいと思う人もたくさんいるだろう)


なお、先日テレビ朝日江口洋介主演の「野良犬」のリメイクドラマが
放送されたが、もとの映画をはるかに下回る出来だった。
私の言うことが間違っているかどうか、ぜひ黒澤明の映画を見てほしい。